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映画「光州5.18」 魂揺さぶる不屈のたたかい

 この映画の原題は「華麗なる休暇」。全斗煥・盧泰愚軍部ファッショ勢力に抵抗した光州の学生・民衆を徹底的に制圧した軍事作戦名である。

 1980年5月18日から約10日間にわたった光州民衆蜂起は、南の民衆の闘争史に永遠に記憶される歴史的な一里塚であった。

 あれから27年目の昨年、南で公開されたこの映画は、光州の悲劇を完全映画化したヒューマンドラマで、観る人の胸に圧倒的な衝撃を与えた。

 家族思いの青年ミヌを通して描かれる「光州事件」。1979年10月の朴正煕大統領暗殺後につかの間訪れた民主化の兆しは、クーデターによって権力を握った新軍部勢力によって簒奪され、非常戒厳令が全土に拡大した。主要都市および大学に戒厳軍が駐屯し、民主化を熱望する人々の動きを封じ込めようとしたのだ。光州民衆蜂起は全斗煥による軍事クーデターに抗議する学生デモへの戒厳軍の激しい暴圧から端を発したもので、学生と市民は武器をとって戒厳軍に立ち向かった。

 この動きに強い危機感を抱いた全斗煥一派による鎮圧作戦「華麗なる休暇」は、5月18日、午後3時に開始。ここに第3空挺特戦団、第7空挺特戦団、第11空挺特戦団、第20師団、第31師団、歩兵隊、砲兵隊、機甲隊などの総勢47の大隊、2万人以上の「国軍」が動員された。また、武装ヘリコプターを含む航空機30機、戦車7台、装甲車17台、車両282台を投入。この空前の軍事作戦による民衆の犠牲者は、2000人以上にのぼると言われているが、いまだに正確な数値は発表されていない。

映画の一シーン

 映画は市民の抵抗を軍事力で圧殺しようとする恐るべき殺りく劇を、当時の記録や証言に基づいて正確に再現する。道庁前を埋め尽くす20万人を上回るデモ隊、容赦なく発砲する軍隊。阿鼻叫喚の地獄図がスクリーンいっぱいに繰り広げられる。

 5月の陽光のもとに幸せをつかもうとした男女の出会い、父が娘に寄せる深い愛情、心優しき青年と弟の情愛…。軍部ファシストの血塗られた惨劇によって平穏な日常が押しつぶされていくさまが克明に描かれる。

 殺されても殺されても立ち上がる民衆の姿は圧巻。歴史の英雄ではない、普通の生活者が、戦車の前に立ちはだかる。高校の先生は生徒をかばい死んでいく。妻と幼子との幸せな時間を突然断ち切られてしまう若い夫、「俺みたいなチンピラでも、人間らしさを実感できた」と撃たれていくチンピラ…。それぞれの最期の姿に涙が止まらなくなる。

 この映画は、光州で犠牲となった無辜の人々へのレクイエムでもある。エンディングのシーンで流れる「ニムのための行進曲」。この旋律は光州への弔い歌として民衆の間でひそかに作られ、歌い継がれてきた。「愛も名誉も名も残さず、生涯を歩みゆかんとした熱き誓い」という歌い出しは、自主と民主、統一を希求する人々の心を揺さぶり、同時に、今を生きるわれわれに無言の問いかけをしているようだ。「いま、すべきことは何か」と。

 昨年、南の観客動員数740万人、歴代興行収入8位の大ヒット作品。日本では5月10日からロードショー。新宿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町2丁目、渋谷アミューズCQNなど。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2008.3.24]