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〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 A〉 コムンゴ

ソンビの気性を表す楽器

コムンゴ

 さて、今回は皆さんにとってまだなじみの浅い、しかし長い歴史を持つ民族楽器を紹介しよう。数年前に金剛山歌劇団公演で演奏を聴いた方はもう一度記憶をたどってその音を思い出してほしい。その楽器はコムンゴ(漢字で「玄琴」または「玄鶴琴」と書く)である。

演奏の手元

 朝鮮民主主義人民共和国創建20周年記念商品展覧会が上野で行われた際に、会場のバックミュージックとしてその録音演奏が流れていた。今まで聞いた事のない楽器の音に魅せられ、ランドセルを背負い友だちと連日訪れた思い出がある。

 「三国史記」によれば、コムンゴは4世紀に中国・晉の国の七絃琴を発展させた3大楽聖の一人、高句麗の王山岳により作られたとされている。王山岳は100あまりの曲を作り、王の前で演奏したとされ、彼が演奏すると二千年は生きると言われた黒い鶴、玄鶴が飛んできて、琴の音色に合わせて踊りを踊った(玄鶴来舞)ということから、玄鶴琴と言われたと伝えられた。

 だが、高句麗壁画にその原型が描かれていることから、それ以前に国固有の弦楽器が存在し、それが発展して現在のコムンゴになったとも言われた。楽器の名前は高句麗にちなんで付けられたもので、高句麗の弦楽器の意味を持つともいわれている。

 コムンゴは統一新羅以後、 玉宝高からはじまり、続明得→貴金→安長 →清長→克宗に受け継がれ広く普及された。

 コムンゴは前面は桐、裏面は栗の木を使い、全長140センチほどで弦は絹糸になっており、スルテがあたる部分には皮(玳瑁)が敷かれている。一番太い第三弦は大弦、第一弦は文弦、第六弦は武弦、第四弦は棵上清、第五弦は棵下清、第二弦は遊弦の6本で、順にだんだんと細くなる。16個の棵と3個の雁足があるコムンゴはスルテ(匙)と呼ばれる細くて短いばちで弦をたたいたり、すくったりして音を出し、伽倻琴、琵琶と並ぶ代表的な弦楽器とされる。

コムンゴをスルテで演奏する

 以前紹介した伽倻琴は弦が12本で演奏も直接指で行うが、コムンゴは弦が6本でスルテで演奏する違いがあり、伽倻琴では出すことができない、荒々しい音を出すことができ、低音は凛々しく響く。

 最高の楽器を意味する百楽之長と呼ばれ、ソンビ(学者、士)の気性を表す楽器として広く崇拝され、自身の精神修養のために演奏したとされている。その音色はソンビの高い精神性をそのまま表現した楽器とされた。現在コムンゴは管絃合奏には必ず組み入れられるが、女性奏者も多く、散調や変奏曲など独奏楽器としても高い人気を集めている。まだ同胞の中では注目度が低い楽器であるが、多くの若者たちに手にとってほしい大切な民族楽器であることに違いない。(康明姫・民族音楽資料室)

 メモ…3大楽聖と呼ばれた3人の音楽の聖人は、高句麗の王山岳、新羅の于勒、そして朝鮮の朴堧である。それぞれの時代に、わが国独自の楽器を作り出し、その楽器のための曲を数多く作ったとされている。

[朝鮮新報 2008.3.28]