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「在日」の自覚芽生えた=@同じ境遇、悩み、思いを分かち合う

生徒らが作詞、作曲を手がけた重唱「僕らの絆」

 「なぜ自分は朝鮮人なのか」「なぜ日本で生まれ育ったのか」などと悩み、問い、葛藤する生徒たち。東京学生会は、そんな思いに自ら立ち向かう自信と勇気を養い、進むべき道を自分自身で切り拓いていくために、さまざまな活動を繰り広げている。

 都内23区の中学、高校に在籍する同胞生徒らを網羅する東京学生会では、1年間サマースクールや各支部、ブロックなどで定期的に活動を行ってきた。19人の生徒たちは、その集大成となる文化公演「絆〜きずな〜」で、ここで出会った仲間たちとの「絆」を確かめ合った。

 公演の練習は、約1カ月間行われた。例年に比べ、練習日数も人数も少なかったが、観客に笑顔を与えるため、仲間との絆を深めるために、合宿も行って練習に励み、ときにはケンカをし、意見を出し合い、本気でぶつかり合いながら本公演を迎えた。

お互い顔を見合わせ息もピッタリだった「サムルノリ」

 会長の徐明莉さん(高2、練馬)は「初めは練習日数も人数も少なかったから、ただ焦って公演の意味など考えられなかった。だけど、毎日反省会をする過程で、観る人たちに笑顔を与え、朝鮮人としての自覚を持って生きていこうとしている姿を見てほしいと思うようになった」と話す。また、朝鮮人としてのプライドを実感させてくれ、同じ境遇だからこそ解り合える仲間と出会わせてくれたこの学生会を「ただの仲良しグループじゃなく、みんなで支え合い、助け合える本当の『絆』で結ばれた会にしていきたい」と意気込んでいる。

 初めて民族打楽器に触れ、チャンダンを奏でた金敬泰さん(中2、足立)。中学生が1人の中で不安もあったが、みんなが親身に接してくれたおかげで、すっかり打ち解けて、楽しく練習に参加できたという。サムルノリの演奏を終え「ミスした部分もあったけど、みんなで気持ちを一つにして演奏できたから、本当に楽しかった。これから中学生の仲間をどんどん増やしていきたい」とはにかんだ。

チマ・チョゴリを身にまといかわいく踊った「ソゴチュム」

 生徒たちは、朝鮮語の歌も覚え高らかに歌った。「指導員が一つひとつ意味を教えてくれたから、朝鮮語の歌詞もすぐに覚えられたし、しっかりと気持ちを込めて歌えた」と話すのは李恵奈さん(高1、渋世)。「各支部に分かれてるけど、東京学生会は一つにつながっている。ほかの支部もみんなで助け合って、東京全体を盛り上げていくことが大切だと思う」。

 学生会を「卒業」した8人の生徒たちは、ここで培った絆を胸にそれぞれの道へと旅立った。

 演劇で正義感の強い熱血漢の会長・基柱役を演じた梁弘三さん(高3、台東)は、「限られた時間の中で、一人ひとりが必ず成功させたいという気持ちで舞台に立ったから、いい公演ができたと思う。『この公演を通して何が残るかな?』と問い続けてきた。この間、何度も話し合ってみんなの考えが変わったし、傍にいる仲間との距離がとても近くなった」と笑った。

映像と共に活動内容を紹介

 舞踊と重唱に出演した金宣希さん(高3、渋世)は、「学生会を通じて『在日朝鮮人』としての自覚がはっきりと芽生えた。初めはただ楽しいだけだったが、活動を続けるうちに考えが深まり、いろんなことが見えるようになった」という。「ただ『在日』ということを知っているのと、自ら自覚して『在日』の魂を持って生きていくのは違うと思う。学生会はそんなことも教えてくれた大切な場所。死ぬまで『在日』! 本当に大変なのはこれからだろうから、同じ悩みを分かち合える仲間たちとずっとつながっていきたい」。

 公演成功に向け、生徒たちをサポートしてきた同公演実行委の安明蘭事務局長(朝青東京都本部日校学生対策部長兼朝青渋世支部委員長)は「公演のテーマを考えながら、自分たちがどう生きるべきかが解るようになったと思う。日校生の気持ちをわかって、呼びかけられるのは彼らだけ。もっと仲間を増やせるように活動に励んでほしい」と話した。

 学生会を「第2の家」と口をそろえる生徒たちは、朝鮮人という目には見えない強い「絆」で固く結ばれた。ここで得た大切な「絆」を胸に、これからもまた新たな仲間とのすばらしい出会いを紡いでいくことになるだろう。(文=姜裕香記者、写真=文光善記者)

[朝鮮新報 2008.3.31]