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〈朝鮮と日本の詩人-54-〉 船方一

「白頭山の峰までも」

 あなた方はチマとチョゴリでやってくる/あなた方はよろこびとにんにくの匂いを/ぷんぷんとまきちらしながらやってくる/あなた方は誰にえんりょ気がねもなく/朝鮮語で歌いながらやってくる/あの忘れることのできない解放の/8.15を歌いながらやってくる/そうだ今日はあなた方の日だ/あなた方朝鮮民族解放の歌声とどろく日だ/朝鮮民主主義人民共和国樹立のよろこびの高なる日だ/やってくる、やってくる、あなた方は/チマとチョゴリでぞくぞくとやってくる/鶴見から、川崎から、横須賀から、湘南から/あなた方はぞくぞくとやってくる/若い男と女も年よりも子供も/みんな旗をふり花輪をかかげ/8.15解放の歌をうたってやってくる(10行略)

 おお 10月の風にひるがえるチマよ チョゴリよ/李さんよ 韓さんよ 金さんよ/特高と憲兵に追われ ごう問に耐えしのび/ついに今のこの日をむかえた数多くのウリトンムよ/今日こそあなた方のよろこびのふっとうする日だ/三千万朝鮮民族の息吹きのはちきれる日だ

 あなた方は朝鮮民主主義人民共和国をつくりあげたひとりびとり/私たちは日本人民共和国をつくりあげようとするひとりびとり/あなた方のよろこびは私たちのよろこびだ/私たちのよろこびはあなた方のよろこびだ/さあ日本の横浜の秋風よ/この歌声をはるかな朝鮮の兄弟におくりとどけてくれ/この腹の底からこみあげてくる8.15解放の歌声を/あの白頭山の峰までもおくりとどけてくれ

 朝鮮民主主義人民共和国創建を祝賀する神奈川県朝鮮人大会に寄せられた献詩「白頭山の峰までも」の部分である。日常の口語をそのままつづった、労働者詩の一典型だといえよう。船方一は1912年に生まれ、労働者詩人としてプロレタリア文学運動に身を挺し、朝鮮人の友人が多かった。敗戦後は日本共産党の幹部を務め労働運動のかたわら新日本文学会横浜支部に所属して詩作をつづけ処女詩集「わが愛は闘いのなかから」(49年)と「船方一詩集」(58年)の2冊を残した。57年46歳で死去。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2008.3.31]