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〈みんなの健康Q&A〉 閉塞性動脈硬化症(ASO)−症状と治療法

 Q:長く歩くと片方の太ももやふくらはぎがだるくなったり、痛みを感じてそれ以上歩くのが困難になります。それで、しばらく休むとまた楽になります。

 A:それは間歇性跛行という症状です。運動や歩行によって下肢の疼痛、だるさ、こむら返り、あるいはしびれ感が生じ、安静により大体10分以内に症状が改善されるのが特徴です。

 Q:どのような原因でおこるのですか。

 A:動脈硬化によって下肢の血液の流れが悪くなるためです。これは閉塞性動脈硬化症(ASO)とよばれ、近年は日本でも増加しつつあります。動脈硬化というのは全身に酸素や栄養素を補給するための血管である動脈がさまざまな過程を経て狭くなったり、つまってしまうことをいいます。生活習慣病と言われる高血圧・糖尿病・コレステロールや中性脂肪の異常、喫煙などによって動脈硬化は発生しやすく、脳梗塞や心筋梗塞の病因としてよく知られています。

 Q:ASOの主な症状について教えてください。

 A:ASOは年齢と共に有病率が増加しますが、じつはその約75%が無症候性といわれています。初期の症状としては軽度の冷感・しびれ感で、歩行にはほとんど支障がありません。ASOにおいて最も典型的な症状は間歇性跛行で、血行障害のため下肢筋肉が酸素不足となり、そのため痛みを生じ、歩けなくなるというものです。痛みの出現部位はふくらはぎに多いのですが、血管の狭窄部位によっては大腿部や臀部にも生じます。また、男性性機能障害もみられることがあります。さらに増悪すると安静時にも疼痛におそわれるようになります。血流不足が深刻化すると、下肢の皮膚・筋肉細胞や組織が壊れ死んでしまい、いわゆる「壊疽・潰瘍」になります。

 Q:ASOの診断は自覚症状がない早いうちにするのがいいですね。

 A:ASOの診断の基礎となる動脈硬化の有無を調べるため、動脈拍動を皮膚の上から直接触れてみるのが基本的な診断法です。血圧計を用いて上下肢血圧の比較を行い、それで判断するという方法も一般的です。画像診断としては超音波、マルチスライスCTスキャンなどが有用な検査法として応用されています。

 Q:ASOが悪化すると足を切断しなければならないこともあるそうですが。

 A:血行再建が不可能、難治性で広範囲の壊死や潰瘍が存在する、歩行不能な下肢の高度拘縮が存在する、といった状況があって、汚い患部から重症感染がおこれば生命の危険にさらされる患者では、患足切断術を施行せざるをえません。

 Q:全身的な合併症も問題となりますね。

 A:動脈硬化危険因子を持っている人にASOは多いわけですから、脳・頸部血管疾患や虚血性心疾患ならびに大動脈瘤など四肢以外に動脈硬化性疾患を合併することが多いのは容易に理解できます。なかでも、脳卒中、狭心症・心筋梗塞および大動脈瘤破裂が死因の75%を占めます。

 Q:ASO予防のため日常生活で注意しなければならないことはどんなことですか。

 A:言うまでもなく動脈硬化の予防、すなわち生活習慣の改善です。喫煙は下肢動脈硬化を促進するので、まず禁煙が必要です。同時に、食事や運動を中心とした肥満の是正、高血圧・糖尿病・脂質異常の管理・治療が重要です。

 Q:もしASOを患ってしまい、間歇性跛行が認められるようになった場合に、自分でできる何か有効な治療法はありますか。

 A:医師の診断を受けたうえで、許可が出れば運動療法がすすめられます。きびきび歩くような30〜60分の有酸素運動を、少し疼痛が生じる程度まで繰り返すという方法で、原則として指導監視下で行わなければなりません。自宅でひとりで行う場合には、跛行の症状が出現してから3〜5分間歩行を継続した後に、症状が完全に消失するまで休憩する。これを一日1回30分くらいから始めて、できれば一日に2回くらい実施すると理想的です。こういったいわゆる血管リハビリテーションは効果発現に2〜3カ月といった時間を要しますが、生命予後と生活能力の改善をもたらす治療法として認識されるようになっています。

 Q:看護・介護においてとくに注意すべきことはありますか。

 A:患肢では深爪や外傷が治りにくいので、とにかく皮膚・爪の清潔を保ち、靴は大きさの合った、むれないものを履かせるようにしてください。正座や長時間起立など下肢の循環を阻害する姿勢は避けましょう。

 Q:医療機関で行われる一般的な治療法について教えてください。

 A:まず薬物療法として、患部の血管閉塞および脳・心血管合併症予防のための内服薬が基本として用いられます。そのほか、血管拡張作用のあるものが加えられることもあり、注射薬もあります。薬物療法や運動療法の効果が不十分で跛行が生活に支障をきたす場合や、安静時疼痛や虚血性潰瘍を有する場合は血行再建が必要になります。このような外科的治療には、カテーテルによる拡張術や自家静脈や人工血管を用いたバイパス術があります。これらのほかにも血管再生療法など特殊な治療法がいろいろ開発されています。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2008.4.17]