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〈みんなの健康Q&A〉 春先のうつ−症状

 Q:最近、テレビや新聞、雑誌などでうつ病について取り上げられているのをよく見ます。うつ病には季節特有のものもあるのでしょうか?

 A:桜の花も咲き終わり、新一年生・新社会人の人達も新生活に慣れ始めた頃でしょうか。巷には今でもまだ、どことなくスーツ姿がぎこちない、新社会人だと分かる人たちをそこここに見かけます。

 この季節は私たち精神科・心療内科医にとって、忙しい季節の始まりでもあるのです。G・Wを過ぎた辺りから初夏にかけて、自分の思った仕事と現実がかけ離れていたり、新しい職場での人間関係がスムーズにいかなかったりし、それらをストレスと感じ、いつのまにか身体に不調を感じる人たちが多くなります。彼らが内科を受診し、検査を受けても異常は見つからず、「自律神経失調じゃないの?」と内科医から精神科・心療内科への受診を勧められることから、メンタルクリニックでは患者さんが増える季節でもあるのです。

 Q:それは現代に限ったことなのですか?

 A:現代は情報(IT)社会と言われるように、学校での勉強(トレーニング)もそこそこに社会へ出され、短期間でたくさんの知識や役割を身に付けなければなりません。また個々の会社での要求も多様化しています。新しい仕事(環境)に慣れて社会適応するためには、多かれ少なかれ苦労をし、いろいろな工夫や選択をする必要にせまられることはよくあることです。そんななかで、知らず知らずのうちに心の病気であるうつ病を発症する人が少なくないのです。

 「会社に行けない、行こうとすると目眩・吐き気がしてしまう」などと、身体に出る症状はいろいろです。「憂うつな気分が続く」「夜、何時になっても眠れない」なども症状の一種です。このような症状を起こす病気にはうつ病・適応障害などがありますが、なかには病気とは言えない患者さんたちも含まれます。今回は専門的な病気の分類等の説明ではなく、そのような具体的な症状や、もし症状があったらどうするかを説明しようと思います。

 Q:具体的な症状について教えてください。

 A:代表的なうつ病の初期症状として「睡眠障害」があります。睡眠障害はうつ病の症状としてほとんど全ての人に出現するといっても過言ではありません。うつ病に現れる睡眠障害としては、「眠れない、眠ってもすぐに目が覚める」などの不眠が全体の8割を占めると言われています。とくに、普段より早く目が覚める「早朝覚醒」というタイプが多いようです。

 次に多く認められる症状として、「食欲不振・体重の減少」が挙げられます。食欲不振と体重減少もほとんどのうつ病にみられる症状です。「何を食べてもおいしくない、砂を噛んでいるような感じ」などと訴えられることがあります。

 「倦怠感・易疲労感」も多く認められます。うつ病になると、別に働き過ぎているわけでもないのに、全身がだるく、疲れやすくなります。また、うつ病の疲労感は休息してもなかなか疲れがとれないのが特徴です。だるさや疲労感は、「つらい一日」が始まる午前中がとくにひどく、「つらい一日」が終わる夕方になると、いくらか心身が楽になることがあり、これを「日内変動」と呼びます。

 Q:他にも何かありますか?

 A:「気分の低下」もうつ病の特徴的な症状です。気分がひどく落ち込む、憂うつ、もの悲しいなどの気分の変化が現れ、ひどく不安になる、落ち着かない、イライラ・不安や焦りなども現れます。気分の低下がひどくなると「ダメな人間だ」と自分の存在を否定したり、さらに重症になると「死にたい」という気持ちが現れたりします。また何事にもやる気をなくしてしまい、無気力状態となる「意欲の低下」も認められます。趣味や楽しみに対してこれまでと同じように興味、関心がもてなくなり、何をするのも億劫に感じるようになり、休日は寝床に入ったまま一日中過ごすようになることもあります。

 Q:症状が進むとどうなりますか?

 A:さらに症状が進むと、頭がボーっとして、考えがまとまりにくくなります。これは「思考の低下」と呼ばれ、物事に集中することができなくなり、判断力も鈍るために決断を下すことがとても困難になります。このため、自分の考えや行動に自信がもてなくなり、物事を悪い方向に考え、悲観的にとらえるようになります。

 Q:身体的な症状も現れますか?

 A:その他の症状としては動悸、発汗、めまい、しびれ、口の渇き、胸部圧迫感・呼吸困難感、頭痛などの「自律神経症状」や、便秘や下痢、吐き気・嘔吐、腹痛、腹部膨満感などの「消化器系症状」「性欲の減退」などもよくみられる症状です。

 長い人生、誰でも一度や二度は、スランプに陥ることがあります。人間は誰でもさまざまなストレスによって憂鬱な気分になり、ひどく落ち込むことがあります。「憂うつ」もうつ病も落ち込んだ状態に陥ることに変わりはありませんが、うつ病の方がより強い落ち込みに見舞われます。強い落ち込みの状態が1カ月前後続いている場合は、うつ病の可能性があります。(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2008.5.14]