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〈朝鮮と日本の詩人-59-〉 こばやしつねお

朝鮮ブナはつよい

 朝鮮ブナはつよい
 真夏のあつくなった水のなかでも
 厚くこおった冬の水のなかでも
 朝鮮ブナはつよい
 ウロコとヒレをいろどっているけれど
 金魚のようなよわさではない
 しずかな水のなかでは
 じっとしているけれど
 そのくろい目とヒレのうごきは
 なにものをもおそれない力と
 つよいあの攻撃をあらわしている
 朝鮮ブナはつよい

 「朝鮮ブナ」の全文である。アジア原産の淡水魚チョウセンブナは低温に強く、水中の酸素が不足してもしたたかに生きることができる。全長14センチほどの雑食性で昆虫をも捕食する。詩人はそうした性質の淡水魚を、自分が知る朝鮮人活動家に例えてこの詩をつくった。朝鮮ブナの習性を巧みに描写しながら、ふだんは温和であるが、たたかいでは勇猛な朝鮮民族の気質を硬いリズムで的確に描いている。簡明直截な、たたみかけるような詩行の構成と、第1行、第4行、そして最終行を「朝鮮ブナはつよい」というリフレーンを用いて、詩の躍動性を創出している。朝鮮人の友人を多くもった中野重治の有名な詩「雨の降る品川駅」の初稿(ちなみに中野は決定稿を書き終わるまで、この詩の推敲を重ねている)に、つぎのような3行がある。

 おゝ
 朝鮮の男であり女である君ら
 底の底までふてぶてしい仲間

 「ふてぶてしい」(大胆不敵)という形容詞は「朝鮮ブナはつよい」というリフレーンと通底しているといえる。

 こばやしつねおは1926年に茨城県に生まれ、敗戦後すぐに詩誌「列島」の同人として「種子」「まっくろな家列」「立川駅前の宵」など優れた政治詩を発表した。詩集「夜の貨物列車」「こばやしつねお詩集」(解放社、1948年刊)に収められている。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2008.5.26]