〈こどもの本だな〉 雨の日は、子どもと一緒に本を読もう! |
むかしばなし、子守唄、朝・日関係を描いたもの… そろそろ梅雨入りの季節がやってくる。 暖かい日が続き、上着を脱ぎ捨て、外を元気に走り回る子どもたち。 でも、雨の日はその「元気さん」も小休止。 本を開いて、親子で語り合うもよし、読み聞かせるもよし。 子どもと一緒に本の世界へ飛び込もう! ここで紹介した絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net) 「いぬとねこ」−いぬは そと、うちの わけ
むかしむかし、おばあさんが いぬと ねこと くらしていた。 ある日、おばあさんは りょうしに とらえられた すっぽんを助けてやった。 すっぽんは竜王のむすこで、おばあさんに恩返しをしにやってきた。 竜王からもらった まほうの玉。おおきな家にすみたいなぁと思っただけで、パッとりっぱな家があらわれ、おいしいものが食べたいなぁと思っただけで、パッとごちそうがあらわれた。 まずしかった おばあさんの暮らしは、みちがえるほど豊かになった。 うわさを聞きつけた 川向こうの よくばりばあさんは、まほうの玉をうばってしまう。 とたんに おばあさんの暮らしはもとどおり。すっかり元気をなくしたおばあさんを見て、いぬとねこが まほうの玉を取り返すため、いざ、よくばりばあさんの家へと急ぐ。 モンモンと吠えていぬは そと。ヤオンと鳴いてねこは うち。お手柄者は、いぬ? ねこ? どっち? いぬは外、ねこは中で飼うことの楽しい由来ばなし。古くから伝わる、ゆかいなゆかいな朝鮮の昔ばなし。 「ことりは ことりは 木でねんね」−「ねんね」をさそう子守唄
夜がふけても寝つかない赤ちゃんに、母親が歌って聞かせる。 「ごらんよ ことりさんは 木でねんね。かあさんに だかれて ねんねんよ…」 庭で、納屋で、水辺で、川底で、いろんないきものが「ねんね」している様子を繰り返し伝える。 読むと、自然に歌声になる、ゆったりした4分の4拍子。深い安心感に包まれる。 夜に眠るものたちの息づかいを伝える朝鮮画の繊細な描写、やさしい色調が、親子を包み込むように眠りへと誘う。 赤ちゃん絵本の作者で知られる松谷みよ子さん(訳者)は、「『ことりは ことりは 木でねんね』に出会ったとき、日本と韓国の、かわらない母親のおもいが、ひたひたと胸をみたしました。(中略)こもりうたをうたって、かたりかけて、いのちをそだてたいと思うのです。そのねがいが、このやさしい韓国の絵本といっしょに、あなたの胸にとどきますように」と書いている。 子守唄は、旋律と歌い手の体のゆれを通して、赤ちゃんにその民族の文化様式を伝える。絵本は、大邱地方のものを元に作られた。 「紅玉」−農民が見た戦争のすがた
戦争が終わった年の秋。 父のりんご畑には、赤いりんごがわんさと実った。 父は毎日りんご畑をながめては、収穫の日を楽しみにしていた。戦争が終わり、今年は家族や村中の人々と一緒にりんごの収穫ができると。 いよいよ収穫という日、りんご畑がおそわれた。 数十人もの群衆が手当たりしだいにりんごをもぎ取って騒いでいた。 川向こうの炭鉱で働かされていた、朝鮮人と中国人の群れだった。目をぎらつかせ、赤いりんごにかぶりついていた−。 絵本の舞台は北海道美唄市。かつて炭鉱地帯として有名な街だった。戦争中は、強制連行されてきた朝鮮人や中国人が苛酷な労働を強いられた場所でもある。 本書は、作者の父が、毎年りんごの季節になると聞かせてくれたという実話を元に作られたもの。 敗戦当時、著者はまだ2歳だった。 北海道の広大な自然。そこでひたむきに生きた農民が見た戦争のすがた。 かつて日本は中国や朝鮮の人びとにひどいことをしてきた。しかし、りんごがなくては家族を養えない…。 紅玉りんごをめぐる、人々の想いが交錯する。 「サクラ」−海を渡ったゾウたちの物語
ゾウのサクラは、1965年にタイから兵庫県の宝塚ファミリーランドにやってきた。2003年同園の閉園に伴い、93種600匹の動物たちはそれぞれいろんな場所に引越していく。そんな中、サクラの引越し先はソウル大公園の動物園に決まった。 本書はゾウのサクラを中心に、過去、日本から朝鮮半島へ渡ったゾウの事実を詳細に取材してまとめたノンフィクション。第1回「子どものための感動ノンフィクション大賞」最優秀作品にも選ばれた。 実は、日本から朝鮮半島へ渡ったゾウは、サクラがはじめてではなく、過去に2頭いた。最初に渡ったのは、1408年に福井県小浜に着いた日本初のゾウだった。そして2頭目は、朝鮮が日本の植民地支配下に置かれた時代。 1頭目は人を踏み潰した罰として「島流し」にされ、2頭目は戦争のために殺された。サクラも「かわいそうなゾウ」になってしまうのか…。 著者は動物児童文学作家のキム・ファンさん。本紙で過去に「アリラン動物園へようこそ!」の連載を執筆した。主な著書に「ジュゴンのなみだ」「くちばしのおれたコウノトリ」など。 [朝鮮新報 2008.5.30] |