〈みんなの健康Q&A〉 食中毒−原因と症状 |
腹痛、下痢、嘔吐、高熱、脱水… Q:梅雨から夏にかけて食品が汚れやすく、腐りやすくなります。食中毒に注意しなければなりません。 A:食中毒とは有害物質で汚染された飲食物や食器・容器などを介して起きる健康障害のことです。とくに、集団生活をする学校や病院などで発生すると大きな問題となります。同じものを食べた2人以上に同様の症状がほぼ同時に起きた場合に食中毒が疑われます。 Q:食中毒の原因にはどのようなものがありますか。 A:主な原因物質としては細菌がもっとも多く発生件数も約7割を占めます。次に多いのがウイルスで、そのほかとして自然毒、消毒剤や洗剤といった化学物質があげられます。 Q:食中毒症状といえば、たいてい腹痛と下痢ですね。 A:それ以外には嘔吐、かぜのような症状や高熱を認めることが多いのですが、重症例では脱水のためふらふらになったり、意識もうろうとなります。また、O−157という名称で有名になった腸管出血性大腸菌などによる食中毒では、細菌毒素によって全身的影響を受け、致命的な状態におちいることもあるのであなどってはいけません。 Q:原因によって症状も異なるのですか。 A:症状や発症までの時間、それに発生時期によって原因物質をある程度推定することができます。 最近の統計では、一番発生件数が多いのはカンピロバクターという細菌による食中毒です。だいたい食中毒の原因中4割を占めます。これは鶏や牛の腸に住む細菌で、食肉・牛乳および飲料水中で増殖し食中毒をひき起こします。胃腸症状の前に発熱・頭痛や筋肉痛が先行するのが特徴です。予防として食肉保存時はほかの食品と分ける必要があります。2番目に多いのがノロウイルス食中毒です。生牡蠣などの汚染二枚貝やウイルス保有者による食品汚染から発生します。激しい下痢と嘔吐が主症状ですが、頭痛・咽頭痛といったかぜとよく似た症状がみられることもあります。 Q:細菌による食中毒にはたくさんの原因菌があるそうですね。 A:カンピロバクター以外にも、サルモネラ・腸炎ビブリオ・ブドウ球菌などがよく知られています。これらは食肉や海産物、おにぎりなどの手作り食品から感染するので、食品の加熱処理、手指消毒を十分に行うことで予防しましょう。 Q:自然毒というのはどのようなものをさすのですか。 A:植物性のものとして毒きのこ・毒草など、動物性のものとして毒貝、フグなどがあります。主に野外学習地や行楽地で少人数に発生しますが、人から人への水平感染はありません。ふだんから自然に親しみ、こういった自然毒があることを知識として知っておきましょう。 Q:ノロウイルスによる食中毒は世間でしばしば話題になります。特別なわけでもあるのですか。 A:発生件数が比較的多く、人から人へと集団発生しやすいので注目されるのです。その感染経路はさまざまなので、日常生活では常に感染の危険にさらされているといっても言い過ぎではありません。汚染した貝類を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合や、感染していた食品運搬加工者・調理人を介して汚染した食品を食べた場合に感染するのが通常です。そのほかにも、ノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染したり、人との接触する機会が多いところで、人から人へ飛沫あるいは直接感染することもあります。 Q:予防するうえで、具体的にはどのような注意が必要ですか。 A:食品の加熱をする場合、中心温度85℃以上で1分間以上かけて行うことが大切です。手洗いにおいては、爪を短く切って、指輪などをはずし、石鹸を十分に泡立て、ブラシを使うよう心がけましょう。すすぎは必ず流水で行います。調理台や調理器具も洗浄をまめに施し、熱湯による加熱処理をするようすすめます。 Q:感染症状と治療について教えてください。 A:感染から発症までの時間は24〜48時間で、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛が主症状です。発熱は軽度で、軽い感冒症状で終わることもあります。ノロウイルスそのものを殺す薬はありませんが、安静にして水分と栄養補給などの対症療法を受けるだけで、たいていよくなります。下痢自体は生体による一種の治療行為なので、下痢止め薬でやたらと下痢を止めてしまうと、むしろ回復が遅れることがあるので注意してください。 (金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2008.6.4] |