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第10回ハングル朗読会「風の音を聞きながら」 「朝鮮語の響きは美しい」

日本の詩人、市民、在日同胞など70人参加

朗読会の様子

 詩やエッセー、昔話などを朝鮮語と日本語で朗読する、第10回ハングル朗読会「風の音を聞きながら」(主催=ハングルを詠む会)が5月31日、東京都調布市の調布市グリーンホール小ホールで開かれた。

 ハングルを詠む会は1997年、朝鮮語の美しい響きに魅せられた、日本の詩人と市民たちで発足した。発足後は年に1つのテーマを決めて、毎月定期的に学習会を開き、資料を集めて詩を詠んだり、詩を翻訳したりしている。98年2月に初の朗読会を開催。その後、朗読会は毎年1回開かれている。

 10年間地道に続けられてきたこの会のモットーは、「声に出して詠むこと」。そして、「詠んだ音を聞くこと」。代表の詩人・なべくらますみさんは、「聞こえてくる音の美しさを感じてほしい」という。

チマ・チョゴリ姿で舞台に立つ額賀とし子さん

 10回目を迎えた今年のテーマは「風」。これまで、「食」「海」「旅」「鳥」などさまざまなテーマで活動してきた。元朝鮮大学校教授の卞宰洙さん(文芸評論家)を招いて、「ハングルと日本語のニュアンスの違い−詩の翻訳を中心に−」と題した講演会を開いたことも。

 なべくらさんは「毎年、テーマに添って作品を選び、辞典を引きながら、一つひとつ手作業で翻訳作業を進め、練習を積み重ね、朗読会を開いてきた。発足当時は『韓国の詩を詠む会』としてスタートしたが、5年を機に、『ハングルの詩を詠む会』に改名した。そこには、これからは北の人たちとも違和感なく詩を語りたいとの思いが込められている。私たちは南北の統一を願っている」と話した。

 朗読会は2部構成となっていた。出演者はメンバー6人と、日本の詩人2人、卞宰洙さんの9人。

 1部では会員たち自らが翻訳した朝鮮語の詩や童話の朗読が行われた。

ゲスト出演した卞宰洙・元朝鮮大学校教授

 まずはじめは、絵本「おおいそがし、こいそがし」(ユン・クビョン作)を全京蓮さんが詠み、次いで阪神・淡路大震災をテーマにした詩「空気入れ」(李芳世作)を李壌姫さん、詩「生命」(申瞳集作)を額賀とし子さん、詩「時間の丸木舟より」(呉世榮作)をなべくらさん、詩「つつじ」(朴八陽作)を金成愛さんが、それぞれ朝鮮語と日本語で朗読した。そして、小嶋敬子さんによる朝鮮民謡「コッタリョン」「セタリョン」が披露された。

 2部ではチャンゴグループ・ノリトによる演奏ほか、戸井田しのぶさんの自作詩「風と水と」の朗読に次ぎ、詩人の作品−徳丸邦子作「若葉寒む」、和田文雄作「風」の朗読が行われた。

 また、卞宰洙さんは、プーシキンの詩「アンナ ケルンに」の解説とロシア語朗読を行い、全京蓮さんと戸井田しのぶさんが朝鮮語と日本語の訳を詠んだ。

 最後は参加者全員で、イギリス民謡「ピクニック」を朝鮮語に直して楽しく歌った。

最後は参加者全員で「ピクニック」の歌を朝鮮語で歌った

 朗読会終了後、薄緑色のチマ・チョゴリを着て舞台に立った額賀とし子さんは、「3年前、新聞の紹介記事を読んで朗読会を観にきた。言葉の響きがとても美しいと思い、さっそく活動に参加した。はじめは翻訳で精いっぱい。昨年は金素月の詩を詠みたいという想いだけで舞台に立ったが、今年は発音に気をつけて間違えないようにと注意した。詩の朗読は普通の文章を詠むのとは違う。まだまだ詠むのに精いっぱい。これからもがんばらなくてはね」と笑顔で語った。

 そして、朗読会に向けて詩「風」を創作した和田文雄さんは、「朝鮮の人々の故郷を想う気持ちを考えて詩を書いた。朝鮮語の響きは美しい。フランス語を美しいという人もいるが、朝鮮語は最高だ。言葉はわからなくても、感動するものがある」と語った。

 朗読会には、関係者を含め70人が参加した。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2008.6.6]