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高演義先生の「反動の消しゴムで消せぬ祖国愛」を読んで

広い世界へと巣立つ羽

 急に紙面を借りて、私的な? ラブレターを書きたくなってしまった。

 だれに?−それは、今年朝鮮大学校を定年退職されたわが恩師、高演義前外国語学部学部長にであり、そして4年間私にもそうであったように、豊かな緑で多くの学生たちに「神話」を与えてくれる、ロマンス通りに抱かれた朝鮮大学校の校舎と寄宿舎にである。

 まずは、恩師、高演義先生、定年退職、本当におめでとうございます。でも、長い間スゴハショッスミンニダ! とは言いません。これからも、もっともっとスゴヘジュシプシオ。…もっとご苦労ください。そしてこれからも心配多き在日同胞の親たちを思い、その子どもたちのために、まだまだがんばってください。なぜなら、日本の反動政治家たちと比べれば65歳で隠居? は考えられませんもの。

 今回紙面で、また高演義節にお目にかかることができ、至極感激もし、安心もしております。先生はお若いころから、活達としたその話し方と同じような歩き方で、少し肩を揺らしながら「おー、みんな行くぞ!」と言わんばかりの勢いで私たち学生に接してくださいました。そして、何よりも先生は 私たち卒業生たちにその生き様をして信念を持ち続けることの大切さ、またそうあるがための情熱を絶やさないことの大切さを教えてくださいました。

 先生、私たちの時代にはユニークで、そして、尊敬すべき先生方がたくさんいらっしゃいましたね。美術の金漢文先生と外国語学部の金ハノ先生。温厚な弟の金漢文先生とは違い、学内では学生とは100%英語でしか話さない金ハノ先生は、ほかの学部の学生にも同じなので、みんな少しいつもどきどきしながらそばを通っていたようです。辞書のどこに何が書いてあるのかわかるくらいの梁南仁先生や、「5時間寝る君たちは豚だよ」と逆説で熱く語った卞宰洙先生…。

 先生、今私も先生がおっしゃる心配の多い在日同胞の親になりました。

 毎日、イルクンの妻として、今夜の夕食のおかずから娘たちのしつけ、教育、そして未来、これからの日本でどのように生きていけるのかとも…。

 でも先生、私もいろいろと心配しながらも、先生のような方たちがおられるわが母校に命より大事な娘たちを二人とも送りました。最初に長女を入学させたときは感激にひたり、愛する学び舎にうれしい報告をすることができたと手放しによろこんでおりました。そして今年、次女が日本の大学を合格しても朝大で学びたいと言った時には、わが人生に誇りさえ感じました。

 愛娘たちがわが母校で同じプリ(根っこ)をもち、また同じプリを培っていく仲間たちと先生方に囲まれながら成長し、いずれは先生のおっしゃる広い世界へと羽ばたいていくのかと。

 今年の入学式には前代未聞のJR中央線火災事故の中でもすばやい大学の対応により式も滞りなく行われ、また、5月には体育祭への招待状が初めて各父母に送られ、もう最後の「娘の追っかけ」しか楽しみがなくなった私にはとてもいいプレゼントでした。五月晴れの中、9時から12時までの短い時間の中で学部別の色に統一されたおそろいのTシャツに身を包んだ学生たちが、綱引きから始まって棒倒し、人探し、クラブ対抗リレー…。

 クライマックスは、学生たちが学部の名誉をかけているといっても過言ではない学部別隊列行進。成績発表では行進で1位となったわが後輩たち(外国語学部)が悲鳴に近いような喜びの声にわき、また総合優勝したら全員ではまろうと、3日間かけて前庭の池を磨き上げた政治経済学部の学生たちの歓声で幕が閉じました。

 わが娘もなれない大学生活の中、たまには自習時間に居眠りをしながらも夜中遅くまでみんなで練習したそうです。

 今回見たのは体育祭のみでしたが、全寮制のおかげで、大学へと通う時間の代わりに自習時間やクラブに時間を回せることができ、また日本の大学生たちとの交流会や学術討論会など学生たちが学問でも多目的に学んでいるのがよくわかります。

 先生、子どもが日本の大学に通っていたら、こんな楽しい学生生活、また全寮制で、いろいろな分野の教授たちや学生たちどうしの交流が自然とできる環境で学べる場はなかったことでしょう。もちろん日本の大学でしか学べないこともあるでしょう。ただ、知識よりもっと大切なことをわが母校は子どもたちに教えてくれていると信じています。

 先生、子どもの進学・就職に悩んでいるアボジ、オモニたちにおっしゃってください。

 広い世界へと巣立つためには自分のしっかりとした羽が必要だと。

 そして、それはわが母校−朝鮮大学校でこそ一番確実に、しっかりと育てられると。

 「百聞は一見にしかず」、まず大学を訪ねてみましょうと。そこには、青春を謳歌している在日の明るい未来たちがいっぱいいるのだからと。

 最後に先生、また講師として教壇におたちになられるとのこと、とてもうれしく思います。どうかまたご出勤の際には、緑豊かなロマンス通りと、わが愛する後輩たちの学び舎として、半世紀以上見つめてきた校舎と寄宿舎にもよろしくお伝えください。(朝鮮大学校23期生、外国語学部卒業・高政子)

[朝鮮新報 2008.6.9]