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〈朝鮮と日本の詩人-59-〉 西沢隆二

思想犯への拷問の残酷さ

 君らは馬のように鞭うたれた
 君らは角材の角の上に座らされ
 膝には重たい石を抱された

 君らは天井から荒縄で吊るされ
 身体の形の解らくなるまで擲られたりした
 君らは厳しい煉瓦の中にいる
 君らの仲間は鉄条網の外に隔てられて会うことが出来ぬ
 君らは病気だ

 おお 朝鮮の同志よ!
 白い寛衣を着て 河辺で水を汲んでいたおれ達の仲間!
 君らは 今捕えられ
 捕えられた為に擲られ殺されようとしている

 それをおれ達は今朝知ったのだ
 それをおれ達に知らせたおれ達の新聞が
 朝の食卓から味噌汁の匂を消した
 飯の味を甘酸ぱく変えた
 そして おれ達はお互いにはっきりと知ったのだ
 一椀の飯はそれだけの戦いの為にのみ食われねばならぬと

 思想犯に対する拷問の残酷さを、検閲を意識した限界点で描写した詩として注目される「荒縄」全31行7連の初め4連の全部である。ちなみに「殺され」は発表当時伏字であった。

 「味噌汁の匂い」が消え「飯の味」を変えたという詩句で、詩人は朝鮮人革命家への連帯感を表した。

 西沢隆二は中野重治、佐多稲子たちと同人詩「驢馬(ろば)」に加わって詩を書き始めた。日本共産党員となりナップに加盟して詩人として活躍した。

 33年に逮捕され45年の敗戦後に非転向で出獄した。獄内で書き綴った詩・短歌・俳句などをまとめて詩集「編笠」を46年に出版した。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2008.6.16]