〈本の紹介〉 すばらしきアメリカ帝国 |
「知的自己防衛」のすすめ 著名な言語学者で20世紀を代表する知識人の一人とされるノーム・チョムスキーへのインタビューを収めた一冊。インタビュアーは20年以上にわたりチョムスキーと仕事をしたラジオプロデューサーのデイヴィッド・バーサミアン。2003年から2005年にかけて行われた。 原題は「帝国の野望(Imperial Ambitions)」。 例えば、軍事力によって世界を支配する米国に挑戦しようとする者が現れた場合、それが捏造や空想だったとしても米国にはそれが脅威に発展する前に消滅させる権利(先制戦争ではなく予防戦争)が「ある」。アルカイダを創出したといわれる1998年のクリントン政権によるアフガニスタンとスーダンへの爆撃は数万人規模の犠牲者が出たと推定されているが、米国にとってこの事件は「起きていなかったし、結果はなかったもの」として扱われている。 このように米国がイラクへの不当な介入を正当化するために新たに持ち出した異常なほど極端な「規範」は、米国の人々を自分たちの安全が脅かされているという恐怖の中に突き落とし、不安をあおったすえに作られた「前提」の上に成り立っている。そしてこれはプロパガンダの格好の餌食となっている。 これをどうやって切り抜けるのか。 チョムスキーは、帝国の野望に抗うことは「長く苦しい闘い」だとする一方で、与えられた事柄を、普通の常識で疑い、調べようとするだけでいいと指摘する。このような「知的自己防衛」には当たり前の理解力があれば事足りるというのだ。 「真実を理解して行動することはそれほど複雑ではない」 本書が指南する事は決して米国のみに限定されるものではないだろう。日本でも同様、氾濫する情報、増え続ける選択肢によって、権力者が伏せようとする真実を洗い出すためにも一読をすすめたい。(ノーム・チョムスキー著、集英社、1600円+税、TEL 03・3230・6080)(呉陽希記者) [朝鮮新報 2008.6.20] |