〈本の紹介〉 戦後日本は戦争をしてきた |
まず朝鮮戦争終結を 本書は、06年11月から07年8月にかけて、政治学者で東大教授の姜尚中氏と、同じく東大教授で「九条の会」事務局長も務める小森陽一氏とが行った対談を収録したもの。二人のやりとりは、「日本の戦後史」という重いテーマにもかかわらず、ときに軽妙洒脱であり、読むものを一挙に国際政治の世界へと誘う。50年生まれの姜さんと53年生まれの小森さんの次のようなやりとりがある。 小森「(前略)私は自分の親から『陽ちゃんは朝鮮戦争の休戦協定の年に生まれたんだよ』としつこく言われて(後略)」 姜「私は勃発の年に生まれています(笑)」 小森「姜さんと二人合わせると…」 姜「休戦協定だ(笑)」 あらためて思い起こす必要があるのは、朝鮮戦争はまだ終わっていない≠ニいうこと。結ばれているのは休戦協定≠ナあって、戦闘行為が中断しているにすぎないということを明確にしながら姜氏は、「(前略)この数年にわたって、北朝鮮危機が日本国民に大きなインパクトを与え、政治を動かし、メディアを動かしました。しかし私は一貫して、この問題の根幹にある朝鮮戦争の終結を図らなければ第二の戦争が起きると言ってきました。(中略)拉致問題であれなんであれ、それがまさしく核とセットになっている以上、ここで休戦協定を平和協定に変えるしか方法がない」と力説する。 一方、小森氏も「(前略)北朝鮮が核実験をしても、国連の安全保障理事会が、国連憲章の第41条に基く『兵力』の使用を伴わない制裁決議をあげたからこそ、6者協議が再開されたわけです。『軍事力を行使しないで、平和的な外交交渉が国際問題を解決する』というのは、日本国憲法第9条の思想に基づき、日本にとって朝鮮戦争の過ちを克服しようとする動きなのだと思います。それが進みつつあるのが現在の情勢です」と応ずる。 朝・日国交正常化交渉の推移を観ても、本書の指摘は的を射ている。この間、北の崩壊説を唱え、米国に従属するだけだった安倍前首相はじめ日本のニューライト、ネオコンたちのお粗末な迷走ぶりにも容赦ない批判を浴びせている。拉致以降のタカ派メディアと対峙しながら、北との対話と和解を強く主張してきた2人の小気味いい対談。(姜尚中、小森陽一著、686円+税、角川oneテーマ21)(粉) [朝鮮新報 2008.6.23] |