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〈本の紹介〉 38度線 非武装地帯をあるく

肌で感じた「雪どけの兆し」

 「冷戦」の時代、世界には一つの国家・民族を分断した三つのラインがあった。ベトナムを南北に引き裂いた17度線、ベルリンを東西に分けた「壁」、そして、朝鮮半島を分断している軍事境界線(非武装地帯)。ベトナム、ドイツが統一した今、38度線は「冷戦の最後の現場」なのである。

 著者は、ソウル支局長時代もふくめ、40年以上も朝鮮問題を取材してきた元朝日新聞記者。そのジャーナリストの目で、世界で最後の「冷戦」の現場の模様を伝えた渾身のルポルタージュである。

 南北へ各2キロ、計4キロの幅で、248キロにわたって朝鮮半島を横断している軍事境界線。ここは、今も鉄条網で仕切られ、緊迫した空気に支配されている。実弾を込めた銃を持つ兵士と監視塔によって見張られてきたが、北と南の対話の進展によって、少しずつ市民が近づける場所が開かれてきた。

 朝鮮半島にやっと到来した「雪どけの兆し」を肌で感じ取った息遣いが全編を通底している。

 著者が訪ねた軍事境界線のスポットは、板門店、臨津江、金剛山、鉄原、江華島、実尾島、白翎島、開城の8カ所。

 なかでも、北南双方で300万人の犠牲者を出した朝鮮戦争の最大の激戦地・鉄原は、いまや渡り鳥・マナヅル、ナベヅルの宝庫。二種類のツルが一グループを作って行動する様子を間近に見られるのは、世界でも鉄原しかないといわれている。「平和のバロメーター」そのものと言われる鉄原の現在の姿こそ、朝鮮民族が願う平和と和解の姿に違いない。

 著者が01年からスタートさせた朝鮮半島非武装地帯を走破する「非戦の旅」は3000キロを越えた。冷戦時代から00年6.15以降、現在に至る状況変化について「驚くばかり」だと感想を記す。非武装地帯の新しい現実が示すのは、民草こそが「平和の源泉」だという平凡な真理だったとも。

 朝鮮民族と歴史への温かいまなざしが、中国、日本をふくむ東アジアの「共生の果実」への夢を膨らませてくれる。(小田川興著、高文研、1600円+税、TEL 03・3295・3415)(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2008.7.4]