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〈本の紹介〉 韓の国の家族

朝鮮半島への情愛を込めて

 NHKの特別番組にNHKスペシャルがある。この番組に戦後50周年を記念して、NHKは詩人・尹東柱を取り上げた。NHKスペシャル/「空と風と星と詩・日本統治下の青春と死」(1995年3月13日午後9時45分から約1時間放送)。また、この番組は南のKBSとNHKが企画から制作・撮影・放送まで最初から最後まで協力して作った初めての番組である(南でも全く同じ内容をほぼ同時期に放映した)。

 それから十数年経った現在、尹東柱は日本人に最も知られた韓国・朝鮮の詩人となっている。勿論茨木のりこさんの「ハングルへの旅」が筑摩書房の高校の教科書(新編 現代文)に転載された事も大きな要素だが、この番組の影響も大きいだろう。まだまだ文化交流に消極的だった両国政府(当然NHK上層部も)を説き伏せ1時間の特別番組を作るのは並大抵ではなかったはずである。まして尹東柱は日本の特高に治安維持法容疑(朝鮮語で詩を書いたことが独立運動をしたとして)で捕まった人物である。

 そんな中でこのドキュメンタリーを作ったのが今回取り上げた「韓の国の家族」の作者の多胡吉郎氏である。彼は南・中国・米国はもちろん北にも調査の手を広げ、取材も敢行しようとした(尹東柱と親しかった人物が朝鮮政府の高官として在職していたから。ただしこれは金日成主席の急逝で実現しなかった)。

 このような作者が四半世紀にわたって韓国・朝鮮にのめりこむきっかけは、南の陶芸の故郷利川に住む陶芸家趙誠主氏との出会いである。趙氏は壬辰倭乱で壊滅的な打撃を受けた朝鮮半島の陶芸文化を取り戻したい、との愛国心から一流大学を卒業後、陶芸の道に進んだ人である。作者は趙氏を兄と呼ぶ。その義姉・甥二人を交えた四半世紀にわたる家族としての心の交流を、慈しみ深い眼差しで描いたのがこのドキュメンタリーである。

 「韓国は人の情をたっぷりと溜め込んだせつなくも美しい国」「日本で愛に飢え韓の国の家族によってようやく愛に満たされた」という作者の身辺もこの間さまざまな変化があった。NHKを退社しフリーの作家となった。一時趙氏との交流も途絶えた。数年を経て再会して絆は深まった。朝鮮半島と趙氏家族への情愛がせつなくも満ちあふれた本である。(多胡吉郎著、淡交社、1500円+税、TEL 03・5269・7941)(烽)

[朝鮮新報 2008.7.25]