top_rogo.gif (16396 bytes)

〈本の紹介〉 震災・戒厳令・虐殺

軍民一致の興奮状態で殺りく

 本書の帯に「記憶しない歴史は繰り返す」と記されている。一部の良心的な日本の人々と在日同胞のたゆまぬ努力によって真相究明が続けられてきた85年前の関東大震災時における朝鮮人虐殺事件。しかし、加害者である日本国家・軍隊は、一片の謝罪もしたことはない。これはどうしたことであろうか。しかも、情けないことに、解放後南の政府も数千人もの犠牲者を出した同胞の受難について、ただの一度もその真相究明を日本政府に求めたことがないのである。

 ことの本質は「軍隊がにわかに朝鮮人に対し一方的に攻撃し、罪なきものをうち殺した」(姜徳相・滋賀県立大学名誉教授)残虐さにある。兵士を駆って殺人鬼たらしめた動機はそもそも何なのか。未曾有の震災の際の救援から攻撃虐殺への急変。その間にいったい何があったのか。

 本書は9日に行われた「関東大震災85周年朝鮮人犠牲者追悼シンポ」の講演録、声明などの資料を収録したもの。

 とりわけその虐殺の主体であった戒厳軍の役割を司法省調査書の記録などを詳細に分析した姜氏の報告は、全く無防備の罪なき同胞に完全武装の兵士が襲いかかり、虐殺した模様を浮き彫りにした。同氏は当時の軍の記録の中に「不逞鮮人」「怪しき鮮人」「不良鮮人」「侵入せる鮮人」の烙印ある「鮮人」なら殺してもよいとの共通の前提があったと指摘する。さらに、軍に続いて民兵化した自警団が鋭敏な臭覚を働かせる猟犬の役割を担って、軍民一致の興奮状態のなかで「デマに狂った人殺し戦争」が行われたと強調した。

 まさに未曾有の国家犯罪である朝鮮人大虐殺を引き起こした軍隊、兵士、一般民衆らは、その後も誰一人実刑を科せられた者はなく、「朝鮮人暴動」のデマ情報を流した官憲や軍隊の責任は何一つ問われなかった。その無責任体質は事件から85年たった今も温存されたままである。

 長年、事件の真相究明に真摯に取り組んできた日本と在日同胞研究者、市民たちの手によって生まれた貴重な一冊。(関東大震災85周年シンポジウム実行委員会 編、三一書房、1200円+税、TEL 03・5433・4231)(粉)

[朝鮮新報 2008.8.22]