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〈みんなの健康Q&A〉 マタニティブルーと産後うつ−主な症状

涙、イライラ、無気力、不安…

 Q:マタニティブルーと産後のうつについてお聞かせください。

 A:出産したばかりの妊婦が、出産という大仕事を成し遂げて、幸せの絶頂のはずなのに、わけもなく涙が出たり、夫のちょっとした言葉にイライラしたり、精神的に不安定になることがあります。このような状態をマタニティブルーと言いますが、このマタニティブルーとは、出産前後の一時期にホルモンの大きな変動によって起こる、軽い抑うつ状態のことを言います。

 この時期は女性にとって、思春期・更年期と並ぶほど精神不安定に陥りやすい時期でもあるのです。症状は人によってさまざまですが、主に涙もろくなる、イライラする、些細なことが気になる、無気力になる、途方にくれる、眠れなくなったり、逆にいつも眠かったり、常に不安な気持ちがつきまとったり…などの症状があります。マタニティブルーは一時的なものなので、これらの症状がずっと続くわけではありませんが、ひどくなると一日中気分が落ち込んだり、食事が摂れなくなったりします。さらに症状が進むと、育児に対する自信がなくなり、部屋に引きこもってしまう人もいるほどです。

 Q:原因はどこにあるのでしょうか?

 A:マタニティブルーは、妊娠することによってホルモンのバランスや分泌量が急激に変化することが原因となっています。思春期、更年期、出産の前後という3つの時期の共通点は、女性ホルモンが激変することです。マタニティブルーに近い状態として、妊娠可能な若い女性の疾患に「月経前症候群(PMS)」というものがあります。PMSの特徴は、「月経の2週間から1週間位前頃(卵巣から卵子が放出される直後にほぼ一致)から起こり、月経開始とともに消失する、周期性のある身体的・精神的症状を示す症候群」と言われています。わかりやすく言えば、「月経の前になると身体や気持ちの調子が悪くなり、次の生理の始まりとともに自然に軽快する、いろいろな症状の集まり」のことを言います。このPMSも女性ホルモンの変化(生理など)により引き起こされる、一連の症状と考えられます。マタニティブルーとPMSはホルモンの変化でとらえると、お互いに近い状態にあると言えます。

 Q:何だかやっかいなことですね。

 A:このように性に関わるホルモンは、PMS・マタニティブルーなどのように気分にも大きな影響を与えます。妊娠前後はイライラしたり、落ち込んだり、眠れなくなったり逆に眠くなったりと、心身ともに疲れてストレスが溜まり、マタニティブルーになることが多いのです。そのほかにも、分娩や、慣れていない育児の疲れ、夜中に何度も授乳に起こされ、慢性的な睡眠不足状態や、ひとりで育児にとり組まなければならない孤独感・不安などのストレスが重なり、感情が不安定になることもあります。主な症状は、情緒の不安定で、不眠や食欲不振、軽い抑うつ状態になったりもします。しかし通常、誰でも多かれ少なかれ経験するマタニティブルーならば、長くても産後1カ月が経つ頃には自然と消えていきます。

 一般的にマタニティブルーは「出産後になりやすい」と思われがちですが、実際は妊娠〜出産〜産後の育児期間全般にかけて起こるものなのです。

 Q:なりやすい人と、そうでない人がいるものですか?

 A:マタニティブルーは特定の妊婦だけに起こる現象ではなく、多くの妊婦が経験をしているものです。とくに、自分が「何ごとにも完璧主義℃メ」と自覚が強い人は注意が必要です。性格的に責任感の強い人や完壁主義の人は、マタニティブルーに陥りやすいとも言われています。なぜなら、元来、完璧主義者は「全てを自分の力で何とかしよう」という気持ちが人一倍強いタイプですから、そもそも家族を含めて、他人に協力を求めることが苦手な傾向があります。ですから、意識的につとめて妊娠中から身近な家族や知人に相談したり、夫の積極的な育児への働きかけを頼むことなどによってストレスの軽減を図ることが大切なのです。

 まずは、マタニティブルーは妊娠中の悪阻と同様、生理的に働くもの、と考えた方がよいでしょう。マタニティブルーは、その人の性格や生活環境、対人関係などによっても左右される、とても繊細な症状なのです。

 次回はマタニティブルーへの対処法などをご説明しましょう。

(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2008.10.1]