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〈みんなの健康Q&A〉 マタニティブルーと産後うつ−対処方法

何より大切な夫の協力

 Q:マタニティブルーの対処法について教えてください。

 A:まずは育児を母親一人で完壁にこなそうとは決して思い込まないことです。あまり堅苦しく考えてしまうと、不安や焦りでどうしても精神的に落ち込んで、いつしか身体的にも精神的にも追い込まれてしまいます。無事出産を成し遂げたのですから、のんびりかまえて、思い切って家事などは手を抜いてしまいましょう。少しくらい赤ちゃんが決まった時間におっぱいを飲まなくても心配は要りません(不思議にオモニたちはお乳の張りで赤ちゃんの授乳時間を生理的に察知します。この能力は世のアボジたちには理解できないでしょう。私の妻が外出から帰って「○時頃赤ちゃん泣かなかった?」と占い師のようにピタリと当てたことがありました。その理由を聞いたところ「ちょうどその頃、おっぱいが張って痛かったから」と返事がありました。正直、私は感心したものです)。

 Q:のんびり構えることが大切なのですね。

 A:理由もわからず赤ちゃんが不機嫌だったりしてもあまり神経質にならず、おおらかな気持ちをもつように心がけましょう。私見ですが、恐らくお母さんは赤ちゃんの些細な変化も見逃さないために神様(私は無神論者ですが…)が、この時期の母親を少し過敏状態にしたのでしょう。なによりも大切なのは、夫の協力です。なんでも自分でやろうとしないで、休日は家事や育児を夫と分担してやりましょう。

 Q:夫の協力ですか…。

 A:積極的に「ちょっとこれお願い」とやってもらうように心がけましょう。日頃から家事に参加している夫なら妻のしてほしい事を理解して、自分から仕事を探して動きます。しかし、家事参加に不慣れな夫は曖昧に頼むと、どこまでして良いか戸惑ってしまいます。

 Q:頼む時のコツはありますか?

 A:「具体的に、何を、どこまで」してほしいか相手にハッキリ言う事が大切です。

 夫に「見ればわかるじゃない?」は通じません。以前にも書きましたが、「自分が思うだけでは相手には伝わらない」ものと理解し、思ったことはどんどん言うべきです。とくに新米夫婦は、まだお互いに「以心伝心」は期待しないようにしましょう。

 Q:夫婦間のコミュニケーションが大切だということですね。

 A:女性を男性の視点から観察してみると、見もしないのにテレビをつけっぱなしにしたり、長時間、友人と無駄話をしたり、買いもしないウィンドショッピングをしたりしています。しかし男性から見たこのような「ムダ」は、女性にとって決して「ムダな事」ではないのです。女性は元来コミュニケーション能力の優れた「生き物」です。それは、逆説的に言うと「コミュニケーションを取らないと、それ自体がストレスとなりうる」のです。

 ですから、赤ちゃんがわが家に来てくれて、赤ちゃん中心の生活に否応なく変化するわけですから、新たなコミュニケーションの輪を広げることが必要となってきます。恥ずかしがらず、同じ年頃の赤ちゃんがいるオモニに声をかけてみましょう。共通の話題や悩みも多いので、気軽に相談ができるでしょう。お産をした病院や地域の保健センターの母親学級、産後なら1カ月健診などで友だちの輪を広げてみるのも良いでしょう。

 また、育児は2人でしていくものですから、なるべく夫と話をする時間をつくるようにしましょう。夫の労りの言葉があれば、なによりもうれしいものです。話し相手になってもらうだけでも気持ちが楽になり、育児の疲れも吹っ飛んでしまいます。

 Q:外出をして気分転換するというのはどうですか?

 A:生まれたばかりの赤ちゃんがいると、なかなか外出できませんが、少しの時間だけ赤ちゃんを家族にお願いして、オモニ一人の時間をつとめて作るようにしましょう。ひとりで散歩や買い物に出かけてみると、いいストレス発散が出来るはずです。しかし一人になったからといって赤ちゃんのことは頭から離れないものです。赤ちゃんと離れてみることでいかに自分が赤ちゃん中心の生活になり、自分を犠牲にしてきたかを実感するはずです。

 家事も育児もいっぺんにきちんとこなそうとしても、なかなか上手くいきません。栄養に気をつけながら、たまには外食に出たりもしましょう。最近のレトルト食品や冷凍食品の質の高さは目を見張るものがあります。これらを上手に利用して、時には家事を手抜きするのも一つの方法です。

 Q:マタニティブルーが長引く場合はどうすれば良いのですか?

 A:出産後1〜2週間してもまだマタニティブルーが続いたり、不安感やイライラ感が強かったり、突然激しい動悸や息苦しさが現れたり、あるいは赤ちゃんへの興味が湧かない、などの症状がある時は「産後うつ病」と呼ばれる状態かもしれません。

 産後うつ病は出産後2週間以内に発病することが多いと言われており、放置したままだと本人の気分の落ち込みだけでなく、その後の子育てに影響し、家族内でのトラブルの原因に発展することもあります。産後うつ病は25〜45歳の母親に多く、この世代の女性のうつ病の10%前後を占めると言われています。マタニティブルーであれば短期間に治りますが、産後のうつ病は自分だけの力では治すのは難しくなります。放置すれば慢性化・重症化の心配があり、育児虐待などの悲劇につながる可能性もありますから注意が必要です。

 Q:「子育て」の社会化が必要ですね。

 A:社会の都市化現象が進んだ現在、育児環境もまた激変しています。大世帯からマンションなど、集合住宅化にともなう夫婦中心の小家族構成への変化に加えて、子育てに対する夫の支援の少なさなどから、元々母親としての予備知識の少ない若い母親に強いられるのは「家庭という密室での育児」です。

 ですから1カ月以上マタニティブルーに似た症状が続くようなら、まずはかかりつけの産婦人科医院などに相談することをお勧めします。最近では私の勤めるメンタルクリニックも、産婦人科の先生経由で紹介状を持参して受診する妊婦さんも以前に比べて増えてきています。

 Q:妊娠中や授乳期間の服薬が、赤ちゃんに与える影響が心配されます。

 A:たしかに、授乳期間であれば、使える薬は限られてきます。場合によっては少し早い断乳が必要になるかもしれません。また、薬を使わないまでも、専門家に話を聞いて貰うだけで、気持ちがいくらかは楽になるのではないでしょうか。また、家庭的事情(ハラボジ・ハルモニがいない)などから、周りからサポートの手が得られないような場合は、地域の保健所(保健センター)や子育て支援(相談)センターなどによる継続した育児相談を受けることも一つの方法です。

(駒沢メンタルクリニック 李一奉院長、東京都世田谷区駒沢2−6−16、TEL 03・3414・8198、http://komazawa246.com/)

[朝鮮新報 2008.10.8]