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〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 E〉 ピリ

管楽器の「花形」、高句麗音楽の音色を現代に

朝鮮半島のピリ

バラバン(トルコ)

バラマン(アゼルバイジャン)

篳篥(ヒチリキ、日本)

管子(グァンズ、中国)

 ピリは朝鮮半島のダブルリードの縦笛。一般的に言われる笛(リコーダや横笛など)とは異なる。ピリの種類にはヒャン(郷)ピリ、セ(細)ピリ、タン(唐)ピリ、そして 朝鮮で改良されたテ(大)ピリ、チョウム(低音)ピリなどがあるが、木の葉で音を出す草笛、柳の皮などをはがして音を出すものまですべてピリと言う。

 楓などで作るテピリは本来のピリより1オクターブ低く、音域も12半音階に調律し、演奏の幅を広げた。

 ピリ改良の中で新しく生まれたのがチョウムピリで、低音を中心とした幅広い音量と独特な音色で表現の幅を広げた。

 ピリは漢字で、「篥」と書く。「篳篥」と書くこともある。中国の漢字表記で「非理(bi-ri)」と発音したのが朝鮮で「ピリ」と発音されるようになった。

 ピリは世界中いろんな所にあったとされている。

 04年にはマンモスの牙で作られたピリがドイツ・シュバベン地方の洞窟で発見され、これらは3万年から3万7000年前の物と推定、94年には同じ洞窟から3万6000年前のものと推定される白鳥の骨で作ったピリが2つ発見された。これらのピリが歴史的に一番古い楽器とされている。

 朝鮮ではいつからピリを作って吹き始めたのだろうか。

 正確にはわからないが、中国の文献にある高句麗音楽の中や唐の宮廷で演奏された高句麗音楽編成にピリがあることから、5〜6世紀頃には現在のようなピリが使われたということが分かる。

 高麗時代以後、ピリは朝鮮時代を経て今日まで、主旋律を担当する楽器として、宮庭音楽から民俗音楽に至るまで幅広く使われた。

 主にタンピリは、宗廟祭礼楽ほか唐楽、ヒャンピリは宮庭音楽のほか民俗音楽合奏、巫俗音楽、舞踊伴奏など、セピリは歌曲伴奏に使われるなど、いわばピリは「花形の楽器」だと言える。

 吹き口がリードになっている分、やや難しい楽器でもあるが風流の瞑想を感じさせ、甘い休息のひと時へ誘うような音色を持つといわれているだけある。

 音域は五音階とせまいが、大きな音で主旋律を導くメロディー楽器として人々を楽しませてくれている。

 ピリは、長い歴史の中でも原型を保つ数少ない楽器の一つである。

 このような歴史深く特徴的な楽器を、もっと普及して行きたい。

 ピリに興味をもたれた方は、是非一度、手にとって魅力的なその音に親しんでもらいたい。(康明姫・民族音楽資料室)

 メモ…アゼルバイジャン=カフカス山脈の南、カスピ海の西南岸に位置する西アジアの一地方。北半部がアゼルバイジャン共和国、南半部がイラン領、東アーザルバーイジャーン州・西アーザルバーイジャーン州となっている。

[朝鮮新報 2008.10.17]