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〈本の紹介〉 ちがいを豊かさに

民族的マイノリティの人権保障を

 今、日本にはおよそ215万人の在日(滞日)外国人が暮らしている。10年前に比べ45.22%の増加である(2007年末、法務省入国管理局統計)。

 増加する在住外国人への対応は、日本各地の自治体や地域で国際化に取り組む人々にとって共通の課題となっていて、国籍、言語、文化や性などの違いを認め、尊重し合う「多文化共生」の地域づくりが求められている。

 現に「多文化共生社会」を実現するための活動を行う団体や、総合学習などで「多文化教育」を取り入れ、外国人学校と交流を深める日本学校は増えつつある。

 そんななか、「大学受験資格」問題や助成金制度をはじめ教育、労働、医療、住居などさまざまな面で環境整備を求める声が高まっている。しかし、その人々に対する無理解や差別・偏見が未だ解消されていない部分は多い。

 本書では長年、学校の教師を務めてきた著者が、夜間中学校で出会った在日朝鮮人や教育運動を通して出会った人々の証言や手記、語りを多数引用し、その実態に迫る。

 著者は、執筆の動機を「在日朝鮮人をはじめとする民族的マイノリティの人権保障をめざした教育運動・実践が、何を課題とし、どのような内容をどんな方法ですすめてきたのか、さらに多文化共生を標榜する今日の日本社会・日本の学校が在日(滞日)外国人にとってどれだけ住みよい社会・学校として開かれたのか、その成果と課題を明らかにし、引き継ぎたいとの問題意識である」と記す。

 また、「本書は在日朝鮮人教育の足跡を実践史としてまとめたものである」としている。

 戦前からの歴史的経緯を背景に日本に住む多くの在日朝鮮人。とりわけその人々に対する当然たる「人権保障」がなされていない。

 そういった民族差別や偏見の根源には、「歴史認識」の欠如があると著者は指摘する。

 差別や抑圧により生活を脅かされ、自己実現を阻まれる人々の抗いは当然の営みであり、その思いに連帯し運動を展開することはますます重要である。

 みなそれぞれが自分らしく生きられる社会、真の「多文化共生社会」を目指す着実な歩みが期待されている。(稲富進著、三一書房、1429円+税、TEL 03・5433・4231)(姜裕香記者)

[朝鮮新報 2008.10.24]