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〈みんなの健康Q&A〉 不眠と睡眠不足−関連疾患

脳梗塞、心筋梗塞になることも、5時間未満は糖尿病の危険増

 Q:睡眠習慣の乱れは身体的な異常を生ずるのみならず、うつ病などとも関係が深いそうですね。

 A:日本では、成人の5人にひとりが何らかの睡眠障害に苦しんでいるといわれています。ある疫学調査によれば、成人の20人にひとりは過去1カ月間に一度でも睡眠薬を服用したことがあるということです。睡眠がうまくとれないことにより血圧が上がったり、血糖が上昇する傾向を示すことがよく知られています。また、精神科疾患とりわけうつ病との関連も注目されています。

 Q:睡眠障害そのものの中でも、一番問題になるのはどういったことですか。

 A:いくつかある中で、不眠と睡眠不足が一般的によく話題になると思います。寝つけない、夜中・早朝に目が覚めてしまうなど、不眠に悩まされる人の数は年をとるほど増えてきます。反対に、よく眠れているようでも睡眠不足が生じるのは若い人に多く、中高年になると頻度が比較的減ります。若者の慢性的睡眠不足の割合は、最近では2割を超えるそうです。

 Q:不眠になる要因についてはどんなことが考えられていますか。

 A:中年以降、年齢とともに不眠に悩まされることが多くなります。確かに、高齢者の不眠症は一般外来でもたくさんいます。ついで健康感がない、すなわち体調がすぐれないこと、ストレスおよびストレスに対処するのが下手であることが不眠をもたらす要因にあげられます。ふだん、運動習慣がない人や無職でごろごろしている人にも不眠が多いようです。

 Q:睡眠不足が若い人に多いのは生活習慣と関係がありそうですね。

 A:年をとると無理がきかないので、睡眠不足になるほど何かに熱中して寝食を惜しんで活動することが減ります。若い働き盛りの人は睡眠を削ってでも仕事をすることが多く、さらに残業などの過重労働のために睡眠不足におちいりやすくなります。遊びにおいても、体力があるので時間を忘れて熱中してしまいます。

 Q:不眠症や睡眠不足が生活習慣病を引き起こしたり、悪化させるといわれています。

 A:睡眠が不足してくると、血糖を調節するインスリンというホルモンがうまく作用しなくなり、血糖値が上昇します。すなわち糖尿病になりやすいということです。一方では、糖尿病患者の約3割は睡眠障害を合併するといわれています。糖尿病による口の渇き、手足のしびれや痛みのために中途覚醒したり、熟眠がさまたげられます。そのため、ますます糖尿病に悪影響が生じます。

 Q:睡眠と肥満は何か関係がありますか。

 A:睡眠時間が5時間未満の人は肥満になりやすく、肥満の人は睡眠時間が短くなるという傾向があります。ところが一方では、睡眠時間が長すぎても太りやすいと統計的にいわれています。長く寝ることによってカロリー消費が減少し、場合によっては昼間の活動力が落ちることがあり、太りやすくなるようです。

 Q:高血圧と睡眠との関係はどうでしょう。

 A:高血圧患者においても睡眠習慣が不良であることが少なくなく、その2割以上でさまざまな睡眠障害が関与しているといわれています。健康な人でも、徹夜したり睡眠が不十分だと血圧が若干上昇することがわかっています。また、糖尿病と同じように、睡眠時間7〜8時間が最も高血圧の発症危険度が少なくて、5時間以下になると発症危険度が約1.5倍になります。長時間睡眠も問題ですが、入眠障害や中途覚醒がある人ではやはり高血圧の発症率が高くなります。

 Q:睡眠障害により糖尿病と高血圧の発症が促進されるということは、ひいては脳卒中や心疾患になりやすいということですか。

 A:脳梗塞・脳出血あるいは冠動脈疾患である狭心症・心筋梗塞をはじめとして、不眠と睡眠不足が直接的にも間接的にも発症因子となり得るし、増悪因子にもなります。

 Q:不眠や睡眠不足が、案外身体的健康に大きな影響を及ぼすということがよくわかりました。

 A:生活習慣病の予防・治療に際しては睡眠の時間と質もよく検討する必要があります。睡眠時間には個人差がありますが、平均して5時間をきると糖尿病・高血圧の発症危険度が上がるので、少なくとも5時間以上は睡眠時間を確保すべきです。また、夜遅く寝れば寝るほど睡眠の質は悪くなってきますから、できるだけ早い時間に床に就くよう心がけましょう。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2008.10.29]