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在日本朝鮮人人権協会の企画 「こころとマウム」エピソード大賞に4作品

在日同胞、日本人から107編の応募 泣いて、笑って、感動いっぱいの力作

寄せられたたくさんの応募作品

 在日本朝鮮人人権協会が今年六月に企画した、「こころとマウム エピソード大賞−日本人と朝鮮人のふれあいが生んだちょっといい話」に107編の応募があり、このほど「エピソード大賞」(賞金各10万円)4編、佳作(各1万円)、審査員特別賞(2万円)など計15編が決まった。

 同人権協会・河正潤会長、金載英理事・企画実行委員長ら審査委員会の厳正な審査によって選ばれたのは、日々の暮らしの中で息づく在日同胞と日本人の温かい交流や友情の秘話だ。

 激動の時代を潜り抜けながら、人が人として助けあい、いたわりあって生きてきた珠玉の物語は、多くの人々の胸に熱い感動を呼び覚ますに違いない。

 エピソード大賞に選ばれた朝鮮大学校2年生の皮美瑛さん(20)の作品「約束」。亡きハルベ(祖父)を愛し続ける日本人ハルモニ(祖母)の深い情愛の中で育った皮さんは、ハルモニの姿をこう活写する。

 「チョゴリを作る手先も、キムチを漬ける腕前も、朝鮮の1世ハルモニたちに負けないくらいうまい。私のかわいがるぬいぐるみには、いつもチマ・チョゴリを縫って着せてくれた。ハンメとお風呂で一緒に歌う民謡は、いつもアリラン」

 早く亡くなったハルベの志の通り、子どもたちを立派な朝鮮人に育てたハンメ。そのハンメの願いは…ミヨン(美瑛)が自分の子ども、孫、ひ孫、そしてその孫たちに途絶えることなく教えていくんだ。自分のルーツを教えていくんだ。ハルベのように優しい心を忘れないでおくれ、ハンメと約束しよう…。そして、明かされる戦後の食糧難のとき、両親を亡くし、幼い弟と妹を抱えた少女(ハンメ)を救った若き日の青年(ハルベ)の姿。激動の時代に人間性豊かに生きた朝鮮青年の生き方がズシリと胸に迫る。

 朴明姫さんの作品「あなたがあなただから」は、バスと電車を乗り継いでウリハッキョに通う幼い娘が、地域の温かい日本の人々に見守られながらスクスク成長していく姿を描いた。朴さんは自らの体験を踏まえてこう訴える。「小さなふれあい、それを一つ一つ重ねて行こう、二つの国の未来に向けて」と。

 「キムチハンメの話」は日本人学生の高須圭子さん(23)の作品。貧しい家庭で育ち公立高校受験に失敗し前途は真っ暗。私立高校に合格していたが、なかなか両親に言い出せなかった。そんなとき、母は仲良くしていた「キムチハンメ」に相談、入学金を工面してもらった。彼女は書く。「ハンメ、ありがとう。おかげで高校も無事に卒業して、今年大学を卒業するよ。働いたら、いっぱい恩返しさせてね」。ほろりと泣かせるエピソードだ。

 最後に東京朝鮮中高級学校教員の崔誠圭さん(41)の作品「ボーナスの約束」。

 ある大学のボランティア団体の一員だったS氏との出会いから物語はスタート。S氏は朝・日の子どもたちの交流を深めようと黙々と打ち込んでいた。そこに起きた「拉致問題」をめぐる一連の騒ぎ。団体のリーダーは交流会の中止を呼びかけ、多くの人が同調。しかし、S氏の立場は変わらなかった。「子どもには何の関係もないこと、楽しみにしている子どもたちのためにやりましょう」と。

 そして、大学院に通う2年間、活動を離れることになったS氏が残したのは「就職して初めてボーナスを貰ったら朝鮮学校に必ず寄付しますよ」との言葉。「有言実行」、すでに3回目のボーナスが同校に寄付されてきた。崔先生は「こんなお人好しの親友がいる限り、日本という土地も素敵に思えるのだと」。

 なお、全入選作品は「人権と生活」27号(15日発行=TEL 03・3637・2820、jinken94@yahoo.co.jp)に掲載予定。エピソード大賞4編は雑誌「イオ」12月号と来年1月号に掲載される。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2008.11.5]