〈みんなの健康Q&A〉 不眠と睡眠不足−改善方法 |
あせらず、のんびり構えて Q:不眠と睡眠不足を改善するにあたって、知っておかなければならないことはどんなことですか。 A:睡眠習慣は一生のうちにどんどん変化していくもので、またその変化には大きな個人差があります。通常は年をとるほど実質的に眠る時間は短くなります。 ぐっすり眠って、朝すっきり目が覚めて、すぐさま活動できるということは実は健康な人でもあまりありません。眠る前、起きる前には体の中で徐々に準備がなされますので、床に入ったらすぐ眠れるわけではなく、また睡眠と覚醒がすっきり入れかわるわけでもありません。寝起きに1〜2時間ボーっとしていて、何もやる気が出ない時間帯があって普通なのです。だから、あまりあせらず、のんびり構えることが大切です。 Q:なかなか寝付けないときにはどうすればよいでしょうか。 A:たとえば雑誌に目を通したり、音楽を聴いたりして眠気の来るのをゆっくり待って、それとなく床に就くということを試してみてください。少しぬるめのお風呂に15〜20分入って体を温めると眠りやすくなることがあります。 Q:睡眠時間はどのくらいが適当ですか。 A:健康維持のためには6〜8時間が適当と考えられています。体が欲している以上にたくさん眠ろうと欲張りすぎると睡眠が浅くなって、夜中に目が覚めやすくなります。夜まとめて眠りたい人でも9時間以上はふとんの中にいないほうがいいでしょう。夜中に目が覚めても、目をつぶったままそのまま休んでいたり、ラジオを聴いたりしているだけでも休養になります。 Q:夜よく眠るため、昼間の生活をどのように工夫すればよいですか。 A:日中はできるだけ外気に接し、自然な日光を浴びて、適度な運動で肉体的な刺激を欠かさず活動的に過ごすことが有効です。運動習慣のある人は不眠になる率が低く、とくに中途覚醒型の不眠になりにくいといわれています。ただし、無理な運動で疲れすぎるとかえって寝つきが悪くなり、いったん寝てもすぐに目が覚めやすいので、毎日の軽い運動習慣をつけるようにしてください。また、午前中よりも夕方の適度な運動が夜の睡眠導入に効果があるという報告もあります。 Q:嗜好品に関してはどのように注意すればいいでしょうか。 A:床に入る2時間位前からはカフェインが入った日本茶やコーヒー、紅茶、あるいは胃腸を刺激する炭酸飲料類は控えてください。寝タバコも控えたほうがいいでしょう。 Q:昼寝についてはいかがでしょうか。 A:あまり長く寝すぎると、眠りが深くなって目覚めが悪くなり、起きた後かえってボーっとして生活に支障をきたします。いちばん眠い時間に30分以内の短い昼寝を取ることをすすめます。そうすると午後の活動の集中力が高まり意欲も出やすくなります。同時に昼夜のメリハリがついて、その結果夜の睡眠の質も高まることが期待できます。 Q:不眠解消にお酒を飲むというのは有効ですか。 A:気分を落ち着かせる意味で少量飲むのはほとんど問題ありませんが、睡眠薬代わりに寝酒をするのは睡眠薬以上にくせになりやすく、中途覚醒を引き起こしたり、睡眠後半の眠りを浅くするのであまりすすめられません。 Q:睡眠薬を使うにあたって気をつけなければならないことを教えてください。 A:不眠症の人ほど睡眠時間を過小評価する傾向があり、実際は一日5〜6時間は寝ているのに良く眠れないと訴える場合が少なくありません。ですから、睡眠薬を使うときにいちばん大事なことは、夜の睡眠時間にこだわるのではなく、昼間の生活の質をいかに高めるかに目を向けることです。昼間あまり眠くならない、あるいは昼間に倦怠感、頭重感、意欲低下をとくに感じなければあわてて睡眠薬を飲む必要はありません。また、睡眠薬は医師の処方によりもらうことがほとんどですから、担当医師に自分の体調を十分に知らせ、ふだん服用している内服薬があればそれも伝えてください。 Q:睡眠薬が効かないからといって勝手に止めてしまうのは大丈夫ですか。 A:睡眠薬を服用してもある程度眠る準備をしないと自然な眠りはやってきません。薬によっても作用時間や効能が違うので、薬効をあまり早急に自己判断してはいけません。だいたい1週間くらいは使ってみて、効果や副作用について医師に報告し相談してください。 Q:睡眠薬はくせになる、あるいはそのうち効かなくなるといわれていますが、本当ですか。 A:現在主に用いられている睡眠薬は、医師の指示通りに服用すれば依存性はほとんど認められません。長く飲み続けると効果がうすれることはありますが、薬以外にも原因があることが多いので、よく医師と相談してください。一方では、眠れる自信がつけば、医師の指導の下で睡眠薬の減量および中止が可能となります。 Q:睡眠薬を飲みすぎると認知症になるのではないかという不安があります。 A:睡眠薬をアルコールと一緒に飲んだり、高用量使ったときに「健忘」すなわち物忘れをしやすくなるので、認知症と誤解されやすいのです。アルコールと一緒には絶対服用しないよう、勝手にたくさん飲まないようにしてください。また、睡眠薬を飲んでも眠ろうとせずそのまま起きていると健忘が生じることが多いので、眠気が来なくても30分以内にはふとんに入るようにしてください。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2008.11.5] |