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〈朝鮮と日本の詩人-72-〉 小林園夫

故郷を追われた朝鮮人よ

 打ちこむシャベル
 掘りおこされる土
 土をのみこむトロッコ
 歯を喰いしばって土を掘る 流れる汗 焦りつける太陽
 渇く咽喉
 軋む鞭 光る眼
 遠くで兵士の演習の銃
 故郷を追われた朝鮮人よ 俺達の友よ
 忘れた言葉を呼びさませ!
 お前の兄弟は叫び出した
 俺達の故郷を戻せ!
 俺達の鎖を断ち切ろう!

 雑誌「プロレタリア芸術」(1928年2月号)に発表された「朝鮮人労働者」の全文である。

 この詩の特徴は、第1行から7行までの各行が、すべて体言止めになっている点である。こうした技法は短歌や俳句によくみられるのだが、現代詩においても用いられて、たたみかけるような緊張感を喚起する効果を生みだす。

 さらにこの詩を技巧的に分析すると、「シャベル」と「土」、「トロッコ」と「土」、「汗」と「太陽」、「乾く」と「咽喉」、「鞭」と「眼」というように、二つの単語が対をなして詩行を整然と流動させている。いまひとつ、汗みどろの工事現場と軍事演習の対比において、労働者の酷使と戦争との相関を、暗喩を用いてあらわしている。詩人は故郷を追われた朝鮮人を「俺達の友」として連帯を示し、民族解放闘争に決起することをアピールしている。

 小林園夫は本名が平川義雄で、東大在学中に学内にあったマルクス主義団体「新人会」に入会して無産青年同盟のオルグとなり、26年に結成された日本プロレタリア芸術連盟(プロ芸)に加盟した。「プロレタリア」「プロレタリアの詩」「戦争を克服せよ」「出発」などの詩を発表して注目された。

 詩集は出版しなかったが代表作は「日本プロレタリア文学集」(新日本出版社)の第38巻に収められている。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2008.11.17]