劇団「アランサムセ」結成20周年 「メイク・アップ」上演 |
在日同胞の「根っこ」を問う
結成20周年を迎えた劇団「アランサムセ」による演劇「メイク・アップ」(脚本=金元培、演出=金正浩)が11月21〜24日、東京・新宿のタイニイアリスで上演された。 99年に初演された「メイク・アップ」。とある在日朝鮮人劇団の稽古場を舞台に、それぞれの生き方をめぐり激しいやりとりが繰り広げられる−等身大の自分たちの葛藤を描いた物語だ。 20周年の今年、自身の足跡と現状を見つめつつ、在日同胞の「根本」を世に問おうと、9年ぶりに再演された。 初日、席を新たに設けるほど多くの観客で会場は埋め尽くされた。生き方をめぐった同胞の現状と真剣に向きあいながらも、ユーモア溢れる演出に観客らは釘付けになっていた。公演後、会場からは惜しみない拍手が送られた。 許美穂さん(20)は、「熱が客席まで伝わってくる、熱い舞台だった。自分もその世界に入り込んでいるような感覚で感激もひとしおだった。本名を名乗ることが容易ではない社会だが、自分を偽らず堂々と生きようと勇気づけられた」と話した。 舞台俳優の小野由香さん(30)は、「シリアスな舞台だと思っていたが、明るく楽しかった。だからこそ、在日が抱えているものが、逆に重いものだと感じた」と感想を述べた。 88年に旗揚げされた劇団は、在日同胞の生き様を舞台に反映してきた。とくに90年代からは、在日同胞の生活の中にある問題点を浮き彫りにしながら公演を重ねてきた。 メンバーはみな、仕事を抱えている。公演の2カ月前から仕事を終えた後、夜に集まり稽古に励んだ。本番2〜3週間前には連日稽古に汗を流した。「アマチュアだけど、プロの厳しさを持って芝居をしよう」という姿勢で臨んでいる。 主宰者の金正浩さんは、「20年の間にメンバーも変わったが、有形無形の伝統がある。若い世代にはどの場に立っても、『在日同胞』ということを忘れず、芝居を続けてほしい」「その文化の中に『演劇』という太い幹を作りたい。『アランサムセ』がその根っこの一つになれればいい」と目標を語った。(姜裕香記者) [朝鮮新報 2008.11.28] |