top_rogo.gif (16396 bytes)

第37回在日朝鮮学生美術展審査員講評 ユーモア、たくましさ、真摯な姿勢

児童、生徒の作品が一堂に

金賞「私たちの言葉、朝鮮語」(韓美優、東大阪中級・2年)

優秀賞「海賊船」(李瑛基、滋賀初級・4年)

学生美術展賞「マンモス対きゅうり魔王」(蒋世鉉、広島初中高・初1)

 9月21日の神戸展からスタートし、北海道から九州まで全国10会場で巡回展を開催している「第37回在日朝鮮学生美術展」。

 今年はワークショップや交流展示など、会場ごとに行われるイベントも充実し、地域ごとに特色のある個性的な展示となっている。

 今回、各地のウリハッキョから同美術展へ寄せられた応募作品の総数は12930点。生徒数が減少するなか、昨年度を1000点余りも上回る応募となった。

 私たちにとって決して恵まれた環境とは言えない日本で生まれ育つ、ウリハッキョの生徒たちの純粋な眼差しには、何がどのように見え、何を感じているのか…。それを知る手がかりの一つとなるのが、表現の世界であるこの美術展だと思う。だからこそ、現場の美術教師は、子どもたちの感性を真っ直ぐに受け止めるべく真摯に作品と向き合い、そこから溢れ出る生徒の声を聞くのではないだろうか。

 子どもたちの作品がそろった審査会場は賑やかで、審査員たちを圧倒する。見れば見るほど、聞けば聞くほど、選ぶ難しさをあらためて思い知らされる。

 近年、在日朝鮮学生美術展は、他の学生美術展とは明らかに違う、特異で輝くような個性を発揮しながら、質量共に大きな進歩を遂げている。それは、複雑な環境が織り成す想像を絶するような困難と矛盾の中、60年以上も続けてきた民族教育の賜物だと言える。

 とくに初級部の作品には、何事にも屈せず困難を笑い飛ばすようなたくましさとユーモアを感じさせる作品が多い。これは、子ども持有の天真爛たくましさなのか、彼らに受け継がれた民族のユーモアと逞しさなのか、見る者に心地よい共感を与えている。

 中級部の一見沈んだ色で支配されたように見える作品には、自分の内面世界を探り、覗き見ようとする、この年頃の心理に真正面から向き合おうとする真摯な姿勢が表れている。中級部美術の授業に対する教員たちの研究、熱意が作品の質を支えている。

 高級部の作品でとくに目を引いたのは、靴を使ったインスタレーションや、環境問題に取り組むプロジェクトを自分たちで立ち上げ、インターネットラジオや雑誌まで発行した活動などである。このような斬新なアイデアは、学生美術展の新たな表現の幅を広げたという点で注目すべきだろう。

 また、社会問題に関する主題が多いのは、政治談議好きなわが民族の特徴を受け継いでいるものとも見て取れる。

 全国規模で毎年行なわれている制作意見交換会や、合同写生合宿などを通じて各校のレベルは向上している。学生美術展は、今に生きる表現者たる生徒たちにとって絶好の発表の場となっている。その熱い思いは、作品に添えられた「コンセプト文」にあますことなく書き記されている。

 各地域の立体作品や幼稚園児の絵など、幼児から青年に至るまで、純粋で真っ直ぐな子どもたちの心が紡ぎ出された作品群を、ぜひ見ていただきたい。(朴一南・在日朝鮮学生美術展中央審査委員会委員長)

[朝鮮新報 2008.12.3]