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〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 G〉 月琴、郷琵琶

丸く美しい月の形、高句麗時代の音色を伝える

ウリナラの月琴(左)、中国の月琴

郷琵琶(左)、中国琵琶

 今回からは人々がよく知っている、古楽器を紹介しよう。

 遥かかなたシルクロードをたどり、沢山の国々の物として根づいた楽器、わが国にも伝えられた古楽器のうち、まず月琴を紹介しよう。

 この楽器は、高句麗の時代から発展してきた撥絃楽器の一つで、共鳴版の形が月のように丸く美しい音色を持つことから月琴と呼ばれた。

 また、阮咸、秦琵琶、秦漢子とも呼ぶ。

 4本の絃(子絃、中絃、大鉉、武絃)、4つの糸巻きと13の柱がある。

 大きさは丸い部分(共鳴版)の直径が39.3センチ、絃の長さは58.3センチで、右胸に抱え、右手でスルテ(竹で作った棒)を持ち弾いて演奏するほか、カヤグムのように指で絃をはじきながらも演奏する。

 三室塚、楽学軌範そして日本の正倉院の物はすべて4絃であるが、舞踊塚のものは5絃であるところから、月琴には4弦と5絃があったとされている。

 中国ではネックが長い方を玩咸、短い方を月琴と区分して呼んでいた。

 月琴は民間では広く使われず、宮廷音楽(主に郷楽)で使われたが、現在では楽器だけが伝えられ、保存されている。わが国ではほとんど演奏されていない。

 次に郷琵琶を紹介しよう。

高句麗古墳壁画の舞踊塚に描かれた人たち

 新羅の三絃三竹のうち三絃の一つで、月琴と同じ撥絃楽器。五弦琵琶、直頸琵琶とも呼ばれた。

 三国時代末から朝鮮末期まで宮中で使われた代表的な郷楽器で、唐琵琶と区分するため、郷琵琶と名付けた。

 5絃で10個の駒があり、ネックとヘッドが連結している。共鳴版の前の部分は桐の木、後ろ部分は栗の木を使った。演奏は左手の指で絃と駒の上を押し、右手に玄琴のようにスルテを持ち絃を弾く。

 郷琵琶は、4絃でネックが曲がっている唐琵琶と違って、5絃でネックが真っ直ぐな点が特徴といえる。

 琵琶は、4世紀ごろ中央アジアからシルクロードを通って中国に入ってきたといわれている。

日本の琵琶

 記録によると、わが国には、高麗文宗(1019〜1083)の時期中国から来たと伝えられたが、西域地方の音楽にだけ使われた点をみても、西域地方の楽器である事は明らかである。コムンゴと同じくスルテを使って演奏するなど、唐琵琶とは異なる。すでに高句麗時代に渡来し、高句麗から新羅に伝わったとされている。

 このように楽器は西から東へと渡り伝えられ、その楽器から風土の匂いがする楽曲が生まれたのであろう。最近では正倉院復元楽器での演奏会もあり、聴いてみると、その時代の音色や音楽に感じ触れることができる。

 皆さんも機会があれば一度演奏会へ足を運び、いろんな古楽器と対面してみてはいかがだろう。(康明姫・民族音楽資料室)

 メモ…楽学軌範=書籍名。朝鮮成宗24(1493)年に王の命により書かれた音楽に関する指針書。高麗歌謡・百済歌謡などが書かれていて、演奏した音楽を描くことで解説した。

 三室塚=中国吉林省集安県如山南に位置する高句麗の壁画古墳の一つ。

 舞踊塚=中国吉林省輯安県通溝に位置する高句麗の壁画古墳の一つ。

 三絃三竹=統一新羅後に属する郷楽器の名称。三絃は玄琴、伽耶琴、郷琵琶。三竹は大 、中 、小 の編成。

[朝鮮新報 2008.12.19]