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〈本の紹介〉 官僚とメディア

深い闇暴く迫真のルポ

 「沈黙のファイル−『瀬島龍三』とは何だったのか」「野中広務 差別と権力」「渡邉恒雄 メディアと権力」など次々と巨大な権力の実態を追及、すさまじい癒着と腐敗を抉り出す衝撃的ノンフィクションを世に問うてきた筆者。

 本書は「官僚とメディア」の腐り切った実態にメスを入れ、想像以上に広がるその深い闇を暴く迫真のルポルタージュである。

 とりわけ圧巻なのは「第7章 NHKと朝日新聞」。2000年12月の女性国際戦犯法廷を扱ったNHK教育テレビの番組に政治家たちが改変圧力を加えたことを徹底的に調べ実証した。

 その経過をたどれば、この番組改変劇にはかなり巧妙な仕掛けが施されていて、NHK幹部たちは安倍(元首相)に呼びつけられたのではなく、安倍ら「若手議員の会」のもとに出向くように仕向けられたのであった。そして「仕掛人」が目論んだ通り、安倍らの意向を敏感に察知して、製作現場に改変を命じたのである。マスコミが政治家の圧力によって節を曲げ、自らがすすんでその侍女になるという実態がここに浮き彫りにされている。戦争中のように治安維持法などの悪法があるわけでもない。しかし、報道機関が内側から崩壊し、権力に与していく醜悪な姿。ある意味で戦時中をしのぐほどの恥ずべき自己規制、大本営発表機関に成り下がったのだ。

 女性国際戦犯法廷が暴こうとした天皇制軍事国家の比類なき凶悪犯罪を自らの手で葬り去った愚劣さ。本書の「黒幕は誰だ?」という問いは重い。(魚住昭著、角川ONEテーマ21、¥686円+税)(粉)

[朝鮮新報 2008.12.22]