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W杯アジア地区最終予選を展望する 堅固な守備、課題は攻撃との連携

 朝鮮男子代表チームは、6月14日に行われたFIFA2010年W杯南アフリカ大会アジア地区3次予選の第5戦、ヨルダンとの試合を2−0で勝利しアジア最終予選への切符を手にした。わたしは代表チームのコーチとして参加した。

 最終予選進出は、誰もが信じていた「最小限」の目標の達成だった。だからこのとき、選手、チーム関係者らの肩の荷は、幾分下りていた。ここまでの過程は決して簡単なものではなかったうえ、朝鮮のサッカー界発展のためには、どうしても「結果」を出して、それをきっかけとする必要があったからだ。

 ソウルで行われた南朝鮮との第6戦、5万の観衆のなかには、統一旗を振り熱烈に応援する同胞、そして熱く声援する200余人の在日同胞応援団の姿もありスタンドは「親善試合」の様相を呈していた。しかしピッチにおける選手、チーム関係者の意気込みは「親善」とはほど遠いムードであった。上海で行われた第2戦(3月26日)を引き分けていたことも、白熱した要素といえるだろう。

 南朝鮮は上海での試合に海外組の選手を呼び寄せ「勝つ試合」と位置づけていた。これにより朝鮮チームよりも優勢と言われた。

 予選全般を通じた南朝鮮チームに対する国内での評価は予想よりはるかに厳しいものだった。そのため南朝鮮の監督は、ホームゲーム(第6戦)に勝利することで、雑多な評価を一掃し威信を挽回する絶好の機会としてとらえていただろう。

 しかし、二度にわたる「北南戦」はいずれも引き分けに終わった。南朝鮮の監督は「試合は優位に進めたが、関係者とファンの期待に応えることができなかったことは遺憾である」と、「絶好の機会」を逃したことにくやしさをにじませたコメントを残した。

 今回、3次予選で初のホームデビューを飾った鄭大世選手のプレーへの関心と期待は、わたしの想像をはるかに超えていた。行く先々で「安英学!」の声とともに「鄭大世!」の声援が飛び、報道陣はこぞって彼らを囲んだ。

 南朝鮮との2試合はともに引き分けたが、これは予測されたものだったかもしれない。それは、朝鮮の強固なディフェンス陣を崩すことが簡単ではないということ。さらに特筆すべきは、3次予選の6試合を無失点で終えたという点だ。FIFAの主催する公式戦で540分もの間、無失点で抑えたことは注目される記録だ。チーム全体の守備意識の高さがもたらしたものといえるだろう。

 しかし、アジア地区最終予選を展望したとき、決して前途は明るいとは言えない。

 最終予選に進出したチームは、FIFAランキングで朝鮮より上位のチームばかりだ。朝鮮が堅固な守備だけでW杯本大会進出を目論むには、まだまだクリアしなければならない課題が多い。

 最終予選の初戦、アラブ首長国連邦戦(アウェー)は9月6日に決まった。それまでにまず、3次予選までの教訓を土台にチームを再整備する必要がある。守備陣のレベルアップをはかり、同時にスピードに乗った効果的な攻撃にどう移行させていくのかを追求していかなければならない。

 これらの課題を、個別の能力を土台にしてしっかりとカバーしチームを作り上げることができれば、朝鮮代表は予想以上の威力を発揮するだろう。(金光浩・在日本朝鮮人蹴球協会副会長)

[朝鮮新報 2008.7.9]