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〈インターハイ・ウエイトリフティング〉 北海道初中高校・徐文平選手がC&Jで銅メダル

総合でも5位入賞

 全国高等学校総合体育大会(インターハイ)のウエイトリフティング競技が8月6〜9日にかけてさいたま市記念総合体育館で行われ、北海道朝鮮初中高級学校の徐文平選手(高3)が105キロ超級クリーン&ジャークで銅メダルを獲得。スナッチでも5位に入賞し、トータル5位の成績を収めた。会場では同校ウエイトリフティング部の関係者、卒業生、開催地埼玉の同胞らが大声援を送った。

 徐選手は「自分としても、部としても最後だったので、絶対に挙げよう、挙げるしかないと思った。同胞の大きな声援が力になった。本当にうれしい」と満面の笑みで語った。

メダルにこだわり練習 「有終の美を飾ろう」 みんなの思いを受け、「止めた」

 北海道朝鮮初中高級学校の徐文平選手(高3)がインターハイのウエイトリフティング競技105キロ超級クリーン&ジャークで149キロを挙げ、見事銅メダルを獲得した。

「最後」に結果を

メダルのかかった「149キロ」を挙げ、必死でこらえる徐選手

 「最後なので挙げるしかないと思った。コーチや先輩たちの期待、同胞の声援に応えたい。そして朝高生として、今年メダルを取れなかった朝高のボクシング部のリベンジを果たしたい」

 徐選手は「149キロ」にさまざまな思いをぶつけた。そして見事に持ち上げた。

 徐選手には大会前から大きな期待がかけられていた。1994年に朝高の全国大会出場が認められて以来、99年のインターハイで朝高勢初の金メダルを獲得するなど輝かしい成績を収めた同校ウエイトリフティング部には、現在部員が一人しかいない。徐選手はその唯一の部員であり、「最後の部員」でもある。卒業生の朴徳貴さんや金恵娟さんの全国大会4冠、そして毎年のように全国大会に出場し堂々たる成績を収めてきた「輝かしい部の最後をメダルという結果をもって飾る」ことが関係者の一致した思いだった。

 徐選手自身、プレッシャーを感じつつも、高級部3年間、ずっとその思いを大きな体に一身に受け止め、コーチと二人三脚で練習に励んできた。

 コーチの金太壌さんは「ウエイトリフティングの全国大会で朝鮮学校の名が刻まれるのは最後になるかもしれない」と、あえて隠さず徐選手を指導してきた。

 残された「国体」は都道府県の代表として名が刻まれる。したがって、インターハイがまさに北海道初中高ウエイトリフティング部の名が刻まれる最後の大会だ。

 「有終の美を飾るのだ。ひじが折れてでも持ち上げろ」

 金コーチはそういって徐選手を送り込んだ。

「絶対挙げてみせる」

表彰台で笑顔の徐選手(右)

 厳しい言葉の裏には緻密な計算があった。

 コーチは3回目に148キロを申告した。というのも、メダルを直接争うことになった山梨の選手は、徐選手よりも体重が軽いので徐選手と同じ重量を挙げると上位に位置される。だから、徐選手と同じ重量を申告してくるだろうと読んだのだ。

 その読みは的中。相手は148キロを申告し成功させた。徐選手は普段ならクリーン&ジャークで140、145、150キロと重さを上げる。150キロは何度も挙げてきた。しかし、相手の動きを見計らった金コーチは149キロに変更。メダルを「確実に」取りにいった。

 「ムンピョンは普段から150キロを挙げている。あそこで149キロなら確実に挙がると思った。わずか1キロだが、140キロ台ということで精神的にかなり楽になったはずだ」(金コーチ)

 いつもおおらかな徐選手。このときは珍しく自分からコーチに「気合を入れてください」と願い出た。コーチもそうした並々ならぬ「やる気」を感じ取っていた。

 「絶対挙がる」

 「挙げてくれ」

 さまざまな思いが交錯する。北海道初中高級学校ウエイトリフティング部、10数年間の集大成。関係者、卒業生も固唾を呑んで見守った。

 149キロをジャークで頭上に持ち上げた徐選手だが体制が安定せず、僅かに左に回ってしまった。

 「止めろ! 絶えろ!」

 体を伸ばし両足を揃え必死にこらえる徐選手。右斜め前方に向いたところで見事静止した。大歓声が上がり、徐選手の顔にいつもの笑顔が戻った。

 金コーチは「狙い通り。絶対挙がると信じていた。同胞たちの期待に応えたかった」、金恵娟さんは「止める、止めろと祈った。成功した瞬間は泣いてしまいそうなほど感動した」と語った。

 創部時代からの尽力者である前北海道初中高校長の崔寅泰さん(茨城朝鮮初中高級学校校長)は、「日本の全国大会で朝鮮学校の名を轟かせてきた素晴らしい部。とても感慨深い。最後にまた素晴らしい結果を残してくれた」と喜んだ。

同胞たちに恩返し

大声援を送った埼玉の同胞たち

 会場には徐選手のオモニ・李英蘭さんの姿もあった。李さんが息子の試合を観戦したのはこの日が初めてだった。徐選手は「まだまだ強くなかったので見せたくなかった」と語る。だが、この日は勇姿を見せる絶好の機会だった。

 「部員が一人なので練習もつらかったと思う。これまでインターハイでは結果を残せていなかったので、最後に結果を出せて本当に良かった」

 李さんは表彰台に上がった息子に手を振り「ムンピョン! ムンピョン!」と何度も声援を送った。その度に徐選手の顔は綻んだ。

 徐選手のオモニは焼肉店「コサリ」を営んでいる。李さんによると徐選手は毎日、朝から肉を食べ、卵を何個もかけたご飯をいっぱい食べるのだという。これを聞いた徐選手は「オモニが朝から肉をだすから食べているだけ」だという。

 こんな受け答えは周囲の笑いを誘ったが、ウエイトリフティングにとって食はとくに重要な要素。金コーチは「ムンピョンはオモニのおいしい料理をいっぱい食べて、3月の選抜大会以来、15キロもウエイトを上げた」という。

 こうした学父母や同胞、教員ら多くの「影の支援」があって、部は活躍してこられることができたのだという。

 この日、会場では開催地埼玉の同胞たちが横断幕を掲げて大声援を送った。

 徐選手はその応援団を目の当たりにしていた。そして「同胞の期待に応えたい」との強い思いで「149キロ」をねじ伏せ、見事期待に応えて見せた。

 「今までの大会で一番声援が大きかった。うれしかった」

 勇姿を見せ付けてくれた徐選手。表彰台では笑顔が一番際立っていた。(泰)

[朝鮮新報 2008.8.11]