〈北京オリンピック〉 女子跳馬金メダルのホン選手 作戦を変更し確実に |
【北京発=李東浩記者】朝鮮のホン・ウンジョン選手(19、平壌市体育団)が17日、北京の国家体育館で行われた女子体操跳馬種目で金メダルを獲得した。朝鮮選手団にとって今大会2つ目の金メダルで、在日同胞の喜びの声も現地に届いている。 作戦変更で確実に
女子跳馬の決勝が行われた17日、国家体育館には予選を勝ち抜いた8人のファイナリストが並んだ。優勝候補で2番目に登場し朝鮮の体操関係者も「すばらしい跳躍をする貫禄ある選手」と認める中国の選手(世界選手権の金メダリスト)は、2回目の試技で膝から着地しトータル15.562となった。このとき、ホン・ウンジョン選手陣営は、作戦を変えた。中国選手に勝つため準備した難度7.2の技をとりやめ、成功率の高い難度6.5の技に切り替えた。 実はホン選手はこのとき、「震えていた」。そして19時13分(日本時間20時13分)、静まり返った会場で緊張した表情のホン選手が6番目に跳んだ。1回目は自身、公式競技初披露の後方宙返り2回半ひねり、2回目は世界選手権で成功したことのある前方宙返り1回半ひねり(いずれも難度6.5)を披露。着地がすこしずれたが、2度の試技はほぼ完璧で、他の選手よりも数センチ高くきれいな跳躍だった。 試技を終えたホン選手が朝鮮のチーム関係者と共に電光掲示板を見つめると、2度目の跳躍はトップの15.750点、平均15.650の点数とともに、暫定1位の表示が灯った。2選手が残ったが、感嘆の声と大きな拍手が会場に響きわたった。この時、ホン選手は金メダルを確信した。すぐにキム・チュンピル監督(47)がかけより抱擁するとホン選手は右手をあげ声援に応えた。緊張で震えていた少女の顔にようやく笑顔が戻った瞬間だった。 優勝候補筆頭の中国の程菲選手は、大勢の取材陣に涙を見せ悔しさを口にしていた。強豪を負かし表彰台の頂点を奪ったのは朝鮮の選手だった。 表彰台で口を閉じ静かに国旗を見つめていたホン選手は、「総書記と朝鮮人民に喜びを与えることができ、とてもうれしい」と話した。 キム監督は「金メダルは選手が流した汗の量ほどに重いもの」と指摘。朝鮮体操協会のリ・ヨンマン氏(49)は「共和国創建60周年を迎える年に金メダルを祖国に捧げる栄誉、体育人として総書記に忠誠の報告ができるという喜びを胸に祖国に戻りたい」と述べた。 難度7.2を目指す 「速度と腕の力があり、運動神経も抜群」(朝鮮体操協会関係者)と評価されてきたホン選手は、11歳のとき、ギターをこよなく愛する芸術肌の父と体育会系の母が熟考の末、娘の性格と運動神経を見きわめて体操を勧め、現監督に指導を仰いだ。 練習熱心で、昨年度の世界選手権では難度5.8の技で4位に食い込んだ。北京オリンピックでは6.5、さらには7.2の技をもって金メダルを目指した。 大会には「総書記と朝鮮人民に喜びを与えたい」という一心で臨んだ。しかし、大きな壁となって立ちはだかったのが前述の中国選手だった。 「程菲選手に勝つため、汗を流し、痛みもこらえ、たくさんの努力をし、今大会までに高く跳ぶための練習を積んだ。そして追いついた」(キム監督) キム監督は、これまでにも2人の選手をオリンピックに出場させてきた。3人目のホン選手で、念願の金メダルを獲得した。 「ホン選手のようなすばらしい選手を育てられて幸せだ。約20年間、監督をし、これまで受けた配慮にやっと応えられることができ、この喜びをどう表現すればいいかわからない」と涙を流した。 体操選手は選手生活が短い。4年後のオリンピックに出場するのか、現段階では決めることができないとキム監督は話す。しかし、はっきりとした目標がある。世界でまだだれも跳んでいない、今大会でホン選手が全世界に初披露しようとして封印した難度7.2の技を跳ぶことだ。キム監督も「世界を驚かせたい」と話す。 「オリンピック競技は終わったが、今回の結果に満足することなく意欲的に練習し、次に臨む大会では難度7.2の技をかならず成功させたい」 緊張が解けず、インタビューでもか細い声の19歳のホン選手。このときは、金メダルを獲得したときと同じ明るい笑顔で力強い自信を見せてくれた。 〈北京オリンピック〉 女子体操跳馬 ホン・ウンジョン選手が金メダル [朝鮮新報 2008.8.19] |