演劇「族譜」−過去を超え、心結ぶ文化の力 |
久しぶりに演劇を観た。「創氏改名」政策をテーマにした青年劇場の話題作「族譜」(原作=梶山季之、脚本・演出=ジェームス三木)。 日本の植民地下にあった朝鮮を舞台に、日本の植民地政策の誤りを厳しく問う作品だ。 上演後、ジェームス三木さんが舞台あいさつに立った。会場は大きな拍手に包まれた。 同氏は、今年の全国巡演をスタートした喜びを語り、「日本の若者たちに、先の大戦中、北朝鮮の人々は何人だったか、と聞いたところ、答えが返ってこなかった」と一言。そして、日本の教育現場では、ヨーロッパの歴史を教えても、朝鮮、中国、とりわけアジアと日本との関わりを詳しく教えていないと指摘した。「何か後ろめたいものがあるのでは…」。そして、「族譜」のような作品が、今の日本でテレビドラマ化されることはまずないだろうとも述べた。 本作品に描かれた、人間が人間を支配し、人の尊厳を無残に踏みにじる狂気。かつて、朝鮮人を「皇民化」の名の下で日本人に仕立て上げようとした事実と朝鮮人の塗炭の苦しみ、そして、国家の任務を遂行する役人の、人間性や良心までをも否定される苦悩に、観客たちは真正面から向き合わされる。 同氏はまた次のようにも語った。「人と人とを結びつけるものは、政治の力でも、軍事の力でも、経済の力でもない、文化の力である」と。 過去の歴史に真摯に向き合う演劇人たちの姿に感動し、割れんばかりの拍手を送る観客たちの姿に胸が熱くなる舞台だった。 今月4日から演劇「族譜」全国巡演がスタートした。(潤) [朝鮮新報 2008.6.6] |