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 今年も梅雨がきた。少々憂鬱になりがちなこの季節だが、街を歩くと雨音ときれいな緑を感じ、大人になった今では、この季節が愛おしくもある。華やかさには欠けるが、なぜか落ち着くこの季節の街の色、白、緑と青紫が私を癒してくれる。

 私はここ数年料理と裁縫、刺繍、編み物といった手をつかった作業に魅了されていて、それらは、気がつけばこの季節の好きな色だらけの作品となっている。なぜこの季節の色を好むのか、そのきっかけは南朝鮮に留学中のことだった。在日の友人に連れられ、とある工房を訪ねた。そこにはポジャギや手鞠刺繍を作り、教えているステキな女性がいた。その方は古典工芸、料理研究家で、私たちを温かく迎えいれてくれ、ポジャギの作り方を一つ一つていねいに教えてくれた。普段から針と糸に馴れ親しんできた私は楽しく、有意義な時間を過ごした。ポジャギを初めて縫い、モシという綿と麻の布を手に取りながら、ポジャギ(布)と料理で安らげる空間造りをしたいと思った。

 それからモシを探しに市場へ、色を知るため本屋へ、伝統工芸作品を観るため美術館や民芸館、博物館へ足を運んだ…。人に安らぎを与える空間造りをしたい。その安らぎの色がなぜか梅雨の色だった。

 人はさまざまな色を記憶し、感じて、それによって日々の暮らしが変わっていくところがある。そんな人々に、安らぎの空間を提案できたら。雨音を耳にしながらそう思うのである。(高基純、臨床検査技師、フードコーディネーター)

[朝鮮新報 2008.6.13]