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チマ・チョゴリ

 先日、友人の結婚式があった。三十路を大幅に過ぎた同い年の友人が、う余曲折を経てようやくたどり着いた晴れの舞台だ。最大の祝意を示そうと思い、チマ・チョゴリを選んだ。

 チマ・チョゴリを着るのは今回が二度目だ。一度目は4、5歳頃だったと思う。初めて目にしたそれは、まるでお姫様の着る衣装のようだった。チマ・チョゴリを着た私は、数軒先の家に住む祖母のもとへ向かった。普段とは違う、しかもお姫様のような格好だ。近所の人は何て言うだろう。ドキドキしながら通りを歩いていた。

 不思議なことがおこった。誰も話しかけてこなかった。いつもお菓子を買う駄菓子屋のおばさんも、店先を通れば必ず声をかけてくる魚屋のおばさんも、誰一人話しかけてこない。しかもこちらを見ているにもかかわらずだ。幼心にも、その異様さに気がついた。白眼視とは、きっとあのことをいう。視線の冷たさに、たまらず祖母の家まで駆け出したことを覚えている。

 今回チマ・チョゴリを着るうえで、何の躊躇もなかったわけではない。やはり勇気が必要だった。ところが、手元に届いたチマ・チョゴリを身に付けた時、全てが吹き飛んだ。似合うのだ。一体何がそうさせるのかわからないが、とにかく似合ってしまう。チマ・チョゴリを着たいと、心の底から思った。

 結婚式の当日は、花嫁衣裳にまけないほどの華やかさで一番目立ってしまった。花嫁さん、ごめんね!!(李千波、私立高校非常勤講師)

[朝鮮新報 2008.9.19]