top_rogo.gif (16396 bytes)

心の余裕

 最近わが家に「珍しい来客」があった。

 立派なユリの花束とデンマークカクタスという花の鉢植えである。ひょんな事からいただいた花だが、私以外に水をやる人なんているはずもなく、(そういえば花に水をやるなんて久しぶりだなぁ〜)と思いながら、鉢植えに挿してある説明書を読んだり、飾り物と化していた花瓶を引っ張り出してきた。

 悲しいかな最後は枯れてしまうのだから……という極端な考えから、独身時代に遡ってみても植物などを育てた事はなかったように思うが、そんな私でも教員として働いていた時は、通勤時に街路樹を眺めながら四季の移り変わりを感じたり、校庭に咲く金木犀の素敵な香りに深呼吸をしながら心を落ち着かせた日もあった。

 それがいつしか終わりなき家事、育児、新しい職場環境での緊張感の中、感慨にふけるまもなく日々がすぎるとともに、自然を楽しむ余裕すらなくなっていた。

 この頃やっとかわいいわが子を中心にした夫婦二人三脚での生活にも自分たちなりのペースをつかめてきたように思うが、そんな事を知ってか知らずか舞い込んできた珍しくも物言わぬ来客…

 自然を愛でるゆとりや日々の中で見落としている事に気付かせてくれた「お客さま」に心の中でそっと感謝しながら、「早速明日からガーデニング!」とまではいかないが、マイペースに自分らしい生活と仕事の調和(ライフ・ワークバランス)を見つけていきたいと思った。(梁明順、会社員)

[朝鮮新報 2008.12.12]