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「青春学校」

 元旦に届いた1枚の年賀状に背中を押されるかのように、本棚から1冊の文集を引っ張り出した。

 桃色の厚紙で装丁された表紙を「青」「春」「学」「校」と、お世辞にもきれいとは言いがたい漢字4文字がタイトルを飾っている。発刊は1995年3月。

 「青春学校(チョンチュンハッキョ)」は94年5月、福岡県北九州市八幡西区にある穴生(あのお)公民館で開講した在日朝鮮人の高齢者を対象とした識字教室だ。名前には「もういちど青春を取りもどしたい」という受講生の願いが込められている。

 日本語の読み書きを指導しているのは地元の大学生や一般市民などのボランティア。開講当時、そのうちの一人だった母について何度か足を運んだ。

 「せいしゅんがっこうはいちばんたのしいです。べんきょうはできませんが、えんぴつをにぎるだけでもたのしいです。やっとじぶんのなまえがかけるようになりました」

 60、70、80歳を越え、しわ立ったその手に初めて握った鉛筆で一字一字、丁寧に書いた筆圧の強い文字が並ぶ。「やみのせかいからひかりのせかい」が広がった喜びとともに、「前の日におぼえたことを一晩で忘れてしまう」というもどかしさも率直に綴られている。

 「青春学校が今年15周年を迎えます」と冒頭の年賀状。

 夜間中学のない北九州市でゼロから積み上げた15年の軌跡を、受講生たちが覚えたての字を書くように丁寧に誠実に伝えたい。(陽)

[朝鮮新報 2009.1.13]