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読者をいつも胸に

 「トンポアイネット拡大21」の取材で、ある地域の総連支部委員長とともに同胞の家を訪ねたときのこと。

 「コマプスムニダ、委員長。いつもお疲れ様!」。委員長と同胞の世間話が始まった。ドアの向こうで行き交う会話の様子を目にすることはできなかったが、しばらくすると、委員長が戻ってきた。これからまた、遠方に住む同胞を訪ねるという。

 同胞の日常生活に日々接している委員長。ドアをすぐには閉めず手を振る笑顔の同胞の表情から、委員長の人柄を垣間見るような思いがした。

 委員長は、日本学校出身。専従活動家になって駆け出しの頃、朝鮮語をいち早く習得するため、独りになれる場所を探しては、朝鮮新報を隅から隅まで大きな声を出して読んだ。同胞とともに歩んできた委員長の後姿がなんだかまぶしい。異国の地で暮らす在日同胞が抱えるさまざまな悩み。その内容は少しずつ変化している。異文化に触れるなかで、さまざまな変化が生まれた。

 しかし、確固たる信念を持って助け合い生きる姿が、各地にはある。過去の歴史を直視し、民族心を伝え、そして後代が継いでいかなければならないと、奮闘する同胞もいる。苦難の道を歩み血と涙を流してきた先代は、この地に数多く残る。在日同胞が生きてきた、忘れてはならない過去が決して遠く古い話ではないということを知らせてくれる。

 同胞の今、ひとりひとりの物語をしっかりと見つめ、描いてもらいたい−。読者の叱咤激励が心に響いてくる。(東)

[朝鮮新報 2009.2.9]