〈経済危機のここに注目-1-〉 底なしの様相 世界経済危機 |
周知のように、米国発の金融危機は実体経済にも波及し、世界同時不況は時がたつにつれて深刻な様相をみせている。米国をはじめ、各国が景気浮揚と金融市場の安定のため総力をつくしているが、経済危機は収まる気配がない。
なによりも、米国をはじめ各国が金融大手への公的資金注入を相次いで打ち出したにも関わらず、経営悪化に歯止めがかからない。
米国金融界の象徴といわれている世界最大のシティグループ(総資産2・2兆ドル)は事実上の政府管理下におかれた。また、経営再建中の米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)も米史上最大の赤字を計上(5・6兆円)し破綻に追い込まれている。 英国では、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)等の金融大手が、英企業史上で過去最大の赤字に陥るなど、金融市場の混乱に伴う巨額損失が相次いでいる。 金融危機による世界の金融機関などの損失は日が経つにつれ増えており、すでに約200兆円に膨れ上がり、当初の予測をはるかに超えてきている。 一方、世界の実体経済も深刻な不況に追い込まれている。 主要資本主義国の10〜12月期のGDP成長率をみると、米国は、ほぼ27年ぶりとなる年率6.2%減、欧州(ユーロ圏)も99年のユーロ導入以来最大となる年率5.7%のマイナス。日本の落ち込みは際立って大きく、実に年率12%のマイナスだ。 世界銀行は、2009年の世界経済が戦後初めてマイナス成長に陥り、世界の貿易量は過去80年で最大の落ち込みになるとの予想を明らかにした。 世界経済危機の震源地である米国の失業率は2月に8.1%となり、約25年ぶりの水準へと悪化、雇用者数は14カ月連続で減少しており、とりわけ昨年11月以降は毎月60万人を超えるペースで減少し続けている。 経済危機で曲がり角に このような状況を反映して、世界の金融市場に株安の波が再び押し寄せている。 NY株はついに7000ドルの大台を割り込み、1997年4月以来、約12年ぶりの安値(3月9日、6500ドル台)をつけた。欧州の株価指数も下落基調で、ドイツでは04年以来、フランスでは03年以来の安値水準を推移している。年初来の下落率は英国約20%、米国25%に至っている。日本の株価も昨年10月につけたバブル経済崩壊後の最安値を下回り、82年10月以来、約26年ぶりの安値水準に落ち込んだ。 2月末の世界の株式時価総額は約28兆ドル(約2700兆円)と、昨年末に比べて約450兆円(14%)も減少している。世界的な景気悪化から金融不安が再燃し、株式離れに拍車をかけているのである。 今回の経済危機では、需要の落ち込みが生産と雇用の減少につながり、消費などの需要をさらに冷え込ませる実体経済の縮小スパイラルに加え、実体経済の悪化が金融機関の経営を圧迫し信用が収縮する、いわば実体経済と金融経済の縮小スパイラルも働いている。 この両縮小スパイラルから抜け出すことは容易ではない。 世界金融危機の根源といわれている「カジノ資本主義」、「強欲資本主義」の横暴を規制し、その見直しをはたしてどこまで出来るのか。1929年の大恐慌以来の危機、100年に一度の経済危機に直面している資本主義体制は明らかに大きな曲がり角にある。 厳しい経済状況のなか、同胞商企業活動や同胞生活への影響も少なくない。 かつてない深刻な局面に立たされている今日の危機の現状をどう見るべきなのか、在日同胞社会と同胞商企業活動への影響などを含め、危機の現状と今後の見通しについて、数回にわけて探ってみる。(池永一、朝鮮大学校社会科学研究所所長) [朝鮮新報 2009.3.16] |