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〈経済危機のここに注目-2-〉 日本のGDP、35年ぶりの下落

戦後最悪の日本経済

[表] リーマン・ショック以降、日本の主要経済指標の変動

経済指標 リーマン・ショック時点 直近の状況
実質GDP マイナス2.3(08年7〜9月期、年率) マイナス12.1(08年10〜12月期、年率)
鉱工業生産指数 105.6(前月比1.1%増、08年9月 75.8(前月比10.0%減、09年1月)
輸出額 7兆3640億円(前年同月比1.5%増、08年9月) 3兆4826億円(前年同月比45.7%減、09年1月)
日経平均株価 1万2214円(08年9月12日) 7086円(09年3月9日)
有効求人倍数 0.83(08年9月) 0.67(09年1月)

 米国発の金融危機はすさまじい勢いで日本経済をむしばんでいる。

 「リーマン・ショック」の悪影響が本格化してきた昨年10月以降、日本の経済指標の悪化に歯止めがかからない。つい半年前までは、「サブプライム問題の影響は日本では限定的」との見方もあったが、実際に足元で生じている景気悪化のペースは予想をはるかに上回っている。

 世界同時不況が深刻化するなか、国内企業の輸出や生産は昨年の秋以降、かつてないスピードで減少。輸出産業に頼りきっていた景気の落ち込みにブレーキがかからない状態といえる。

 内閣府の発表によれば、08年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)は前期比3.1%減、年率換算で12.1%減と主要資本主義国で最も急激な落ち込みとなった。

 年率換算で2ケタのマイナスは、第1次石油危機の影響を受けた74年1〜3月期(13.1%)以来、実に35年ぶりで戦後2番目の落ち込みだ。

 企業の生産活動は09年1〜3月期も大幅に鈍化することが予想されており、実質GDPが、史上初の4四半期連続マイナス成長となる可能性が濃厚になっている。

 これにより、08年度の経済成長率は過去最悪だった98年度のマイナス1.5%を大幅に下回り2%台半ばまで下落する見通しであり、09年度も3〜6%台のマイナスになるとの見方が多く、2年連続のマイナス成長は避けられないと言われている。

 景気減速の主要因だという輸出を見ると、10〜12月期の輸出は13.9%のマイナスで、減少幅は75年1〜3月期(マイナス9.7%)を上回り過去最大だった。

減産ラッシュ、雇用削減

 これを反映して、企業の生産基調も急速に低下していることが浮き彫りとなっている。

 今年1月の鉱工業生産指数は前月比で10.0%、前年同月比で30.8%低下し、いずれも過去最大の落ち込み幅を記録した。生産指数の低下は4カ月連続、全業種の生産が減少した。

 予測指数では、1〜3月期の生産指数は前期比22.4%の低下、昨年10〜12月期の12.0%より低下幅が拡大することになる。

 今期4500億円の営業赤字に転落するトヨタ自動車が象徴するように、日本の主力産業である自動車や家電、電子部品に関連する企業の生産ラインは、現在、おしなべて50%程度の低い稼働率にとどまっている。製造業大手では、生産の3割、4割減は当たりまえになり、下請けの中小企業では、7〜8割減のところも多々あるようだ。

 企業の減産ラッシュに伴い、雇用削減の勢いは増すばかりで完全失業率も初の6%台に達する可能性も出てきた。

 このような日本経済全体の急激な悪化の最大の要因は、米国向けを中心に輸出に頼りすぎてきた経済構造のもろさにある。米国の過剰消費に支えられた「世界同時好況」の恩恵を最も受けたのが日本の輸出産業だっただけに、同時不況に転じた時の傷は最も深いものにならざるをえないといえる。

 深刻なのは、内需、外需ともに明るい材料はほとんどなく、輸出減少で減産が進み、設備投資の減少や雇用情勢の悪化をもたらす、それが消費の冷え込みをもたらし、さらに生産を下押しするという悪循環にはまりつつあることだ。まさに「戦後最悪の不況」といわれるゆえんである。

 世界同時不況は深刻さを増し、輸出頼みの日本経済がこの「戦後最悪の危機」から抜け出す時期は今のところ不透明としかいいようがない。日本経済に再び、経営危機、企業倒産、雇用不安、そしてデフレ・スパイラルの恐怖が忍び寄っているのである。次回からその深層を探ってみる。(池永一、朝鮮大学校社会科学研究所所長)

[朝鮮新報 2009.3.23]