〈経済危機のここに注目-3-〉 急速に落ち込む企業景況 |
世界同時不況が深まるなか、企業の景況が急速に落ち込んでいる。
昨年10〜12月期の法人企業統計によると全産業の経常利益が前年同期比64.1%の大幅な減少になった。とりわけ、製造業の落ち込みが激しく94.3%減の過去最大のマイナスを記録した。全産業の売上高は11.6%のマイナス、減収は4期連続。昨秋以降の金融危機などの影響で企業業績が急速に圧迫され大幅に悪化している実態が鮮明になった。
さらに全産業の10〜12月期の設備投資額をみると、前年同期比17.3%減(10兆7690億円)と過去最大の減少率を記録し、7四半期連続の減少となった。設備投資は景気の先行指標にもなるだけに、景気低迷の長期化が予想される。 中小企業へ目を向けると事態はもっと深刻だ。昨年12月の中小企業全産業の採算状況DI(「好転」−「悪化」の企業割合)はマイナス27.3と過去最大の「悪化」超を記録した。 また全国商工連合会がまとめた2月の「小規模企業景気動向調査」によると、産業全体の業況DIはマイナス82.4と過去最低水準を推移している。業種別にみると、製造業マイナス80.8、サービス業マイナス77.2、小売業マイナス80.8、建設業マイナス90.9となっており、厳しい現状がうかがえる。 そんななか、企業倒産も急速に増えている。東京商工リサーチによると、昨年の負債総額1千万円以上の企業倒産件数は前年比11.0%増の1万5646件で、03年以来5年ぶりの高水準だった。金融危機に伴う大型倒産が多く、上場企業の倒産件数は戦後最多の33件に達し、全体の負債総額も前年の2倍以上になった。とりわけ、金融危機が深刻化した9月以降、建設業、金融業、運輸業などの大型倒産が増加しており、今後、倒産件数は急速に増える可能性が高いと予想される。 流動性の危機 このように企業景況が悪化するなかで、企業は資金繰りに悲鳴を上げている。 昨秋の「リーマン・ショック」以降、大手企業は手元流動性が枯渇するのではないかという恐怖にとらわれており、在庫管理や、社員の給与など運転資金確保のため、CPや社債の発行枠の拡大、銀行からの借り入れ枠の増大等、目の色をかえて金をかき集めている。 「徹底的にキャッシュを確保しないといけない」、ある大手企業の社長の言葉であるが、これが多くの経営者の共通認識になっているようだ。 とりわけ、大手企業の急失速で財務力が乏しい裾野の中小企業は資金繰りが一気に苦しくなっている。全国銀行協会によると、中小企業が決済手段として使っている手形取引の不渡りは、昨年12月に410億円と、前年の約1.5倍に上った。 売上高の落ち込みで現金収入が減るなか、企業の業績悪化から企業間の取引条件の厳格化が進み、金融機関の貸し出し姿勢が厳しくなっていることも作用しているようだ。 マクロ的視点からみると、「流動性の危機」といわれている状況の下で、資金繰り難に歯止めをかけないと経済全体が「負のスパイラル」に転げ落ちる可能性も否めない。 金融市場が壊れて金融機関が貸し渋ると、産業活動は鈍って景気は悪化する。景気が悪くなれば不良債権先になる会社が増え、損失が膨らんだ銀行はますます融資ができなくなるというわけである。 日本政府と日銀は、産業界にマネーを流し込むための政策を「総動員」しているが、企業にとっては実体経済が悪化しつつある状況のもとで格下げが相次ぎ、資金調達が難しくなるのは必至である。銀行は自分の財務体質を改善するのに手いっぱいで、リスクの高い融資をしようとはしない。資金繰り対策の効果は少しずつ表れているといわれているが、今後の実体経済の成り行き次第では上述した負の連鎖もおこりえるのではないだろうか。 「流動性の危機」のなか、同胞企業にとって資金繰りは経営上の死活の問題として重くのしかかっている。金融、不動産、遊戯業など、キャッシュフローの健全性が一層求められる業種に多数従事する同胞企業にとって今後、「フロー重視の経営」「キャッシュフロー経営」に積極的に取り組んでいくことが以前にもまして切に要求されよう。(池永一、朝鮮大学校社会科学研究所所長) [朝鮮新報 2009.3.30] |