新在留管理制度関連法案に関する集会 「人権セミナー」と人権協会の共催で |
「たたかいを通じて権利獲得を」 「新在留管理制度関連法案を斬る! 新たな入管体制に見る日本の外国人政策」(主催=「在日朝鮮人人権セミナー」、在日本朝鮮人人権協会)が5月23日、東京・飯田橋の東京ボランティア・市民活動センター会議室で行われた。会場には当初の予想をはるかに超える多くの同胞と日本人が詰めかけ、この問題に対する関心の高さをうかがわせた。
何も変わっていない
集会ではまず、主催者を代表して人権協会の河正潤会長があいさつ。人権協会ではこの間、在留管理制度の改善を求める提案書を提出する一方、シンポジウムや勉強会などを通じてこの問題に対する認識を深めてきたと指摘。当局は「監視ではなく便宜を図る」ことに目的があると主張しているものの、それが本当なのか吟味する必要があると語った。 そのうえで「外国人は煮ても焼いても構わない」という日本の外国人政策に対抗する有効な対応策を模索しなければならないと強調した。 続いて3人が報告した。 自由人権協会の旗手明理事は、2001年の9.11以後、外国人を監視対象とみなす世界的な流れがあるとしながら、日本では03年以降「外国人による犯罪」が喧伝された結果、外国人に対する視線がさらにゆがみ、「テロリストの可能性がある人間」、排斥の対象になってきたと指摘した。 また、日本では少子高齢化が急速に進み、労働力としての外国人を大量に受け入れざるを得ない状況で彼らを管理しようという目的から今回の関連法案が出てきたと述べた。 続いて報告した金舜植弁護士は、これまで在日朝鮮人をはじめとする特別永住者は、入管法と入管特例法、外国人登録法によって管理されてきたと述べながら、永住者であるにもかかわらず外国人登録証を常時携帯し更新もしなければならないなど、不当な扱いを受けてきたことに言及、たとえ外登法がなくなっても在日朝鮮人の処遇においては何ら変わらないと強調した。 また、日本は人権を保障するために今回の法案を出したわけではなく、国際的な批判を受けて仕方なく改定したのであり、日本人には住民基本台帳カードの常時携帯義務がないのに、なぜ外国人にだけ常時携帯義務や刑事罰が残るのかと法案の問題点について指摘した。 そのうえで、今回の法案がそのまま通過した場合、歴史的な経緯が同じである永住者の間にも「特別」と「一般」によって処遇の違いが生じると指摘。在日朝鮮人の出入国の権利は人権として当然保障されるべきものであり、仮に法案が通ってもあきらめるのではなくこれまでと同様、たたかいを通じて権利を獲得していかなければならないと訴えた。 国内外のたたかいを結合 「人権セミナー」事務局長の前田朗・東京造形大学教授は、国際人権法の観点から今回の問題について論じた。 前田事務局長は、日本は現在「非国民」を作る時代、恐怖の時代に入ったとしながら、在日朝鮮人には「国籍国」ではなく生まれ育った場所という意味での自国に帰ってくる権利を制限されているばかりでなく、諸外国でも目に見えないさまざまな負担を負わされていると述べた。 また、日本政府が1979年に国連人権規約を批准したのに続き難民条約(82年)、女性差別撤廃条約(85年)、子どもの権利条約(90年)などを批准したことによって少しずつ人権状況が改善されてはいるものの、望むべきレベルには達していないと述べながら、外登法や入管、受験資格、年金差別など国際人権法により指摘された在日朝鮮人の地位問題と関連した勧告を正面から受け止めていないと語った。 そのうえで、国際人権委員会が人権理事会に格上げされたことは、より政治的な舞台になったことを意味すると述べながら、こうした点に鑑み、国内はもちろん国際社会にどのように訴えていくかを考えるとともに、国内外でのたたかいを有機的につなぎ合わせていくことが何よりも大切だと強調した。 「人権セミナー」代表の床井茂弁護士は、日本の政治、社会の反映としての今回の動きが何を意味するのかを考えなければならないとしながら、在日朝鮮人に対する差別が少しずつではあるもののなくなっていることを、日本社会の明るい未来を示唆するものと捉えていこうと締めくくった。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2009.6.1] |