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未来と犬の糞

 最近、犬の糞を踏まなくなった。なぜだろう。街が美化されたからだろうか。マナーが向上したからだろうか。それだけではないような気もする。きっと上を向いて歩かなくなったからじゃないだろうかと、ふと思う。つまるところ希望が大きすぎてその程度のものは気にも留めていなかったからかも知れない。

 先日、福岡朝鮮歌舞団のディナーショーを取材した。結成以来初となる市民団体による主催。150人の市民、同胞たちが参加し、大いに盛り上がった。市民たちは口々に、「一日でファンになってしまった」「歌舞団は地域の宝物」だと賛辞を送った。その中に、「4人しかいないのは残念。もっとたくさんの団員がいたらいいのに」という声もあった。

 歌舞団の運営は楽ではない。スケジュールの管理から練習、舞台作り、移動までのすべてを自分たちでこなさなければいけない。団員を増やすということは、若い団員たちの未来を歌舞団が背負うこと を意味する。厳しい運営状況の中、簡単なことではない。ためらわれたが、「団員を増やして」という声があったと彼女たちに伝えた。反応が知りたかったからだ。すると、自分たちもそう思う、そのための努力を惜しまないと彼女たちは即答し、抱負を語った。まっすぐな視線の先にはしっかりと彼女たちが描く明るい未来があった。

 犬の糞程度の古い常識ならば踏み潰してしまえばいいと考えたが、彼女たちはきっと違うと言うかも知れない。同胞、市民たちの支持でしっかりと地に足を着けているからだ。(丘)

[朝鮮新報 2009.6.8]