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朝鮮のクラシック

 世界を代表する日本人指揮者、小澤征爾氏は23歳のとき単身渡欧。あるテレビ番組のインタビューで「日本人がどこまで西洋音楽を理解できるかという壮大な実験をしてきた」と語っていた。

 当時の日本の状況に鑑みたとき、まさに冒険的挑戦である。しかし、なぜか聞き流すことができずにひっかかりを感じていた。

 今回、かねてから興味を抱いていた朝鮮の指揮者たちへのインタビューが実現した。金柄華、キム・ホユン、チェ・ジュヒョクの3氏。それぞれ70代、40代、20代で現在の朝鮮音楽界をリードする指揮者たちだ。

 なかでも、チェさんへの取材は本紙では初めてのことだった。今年5月、公演を見て以来すっかりファンになってしまった。取材時、限られた時間内でその魅力にいかに接近できるか試行錯誤した。

 18歳のとき、ウィーン国立音楽大学に留学し湯浅勇治氏に師事。180センチもある体躯、物やわらかな語り口でどんな質問にも丁寧に答えてくれた。

 取材の終盤に「ヨーロッパに残りたいと思わなかったのか」と尋ねた。

 返答を待つことはなかった。

 「ヨーロッパの音楽もいい。でもやっぱり朝鮮のクラシックにひかれる。朝鮮人だから」と言いきった。

 それは、冒頭のひっかかりに対する答えでもあった。自国の「クラシック音楽」の存在。チェさんは留学中、小澤氏の授業を受けたことがあるそうだ。朝鮮の若き音楽家は小澤氏の目にどう映ったのだろうか。(陽)

[朝鮮新報 2009.9.14]