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NPO法人「アリランはんしん」設立5周年記念特別講演会

「やるべきことしっかりやりたい」

 NPO法人「アリランはんしん」設立5周年記念特別講演会「なるほど! なっとく介護〜認知症・老いに関する理解を、老人のありのままの姿から見つめ直す〜」が6日、西宮市立勤労会館で行われ、204人の同胞、日本市民らが参加した。講演会では、介護分野の第一人者である「生活とリハビリ研究所」の三好春樹代表が講演。自らの実体験に基づき、老いや認知症とどのように向き合っていくべきかについてわかりやすく話した。                             

「チャレンジの5年間」

講演会には204人が参加した

 講演会ではまず、主催者を代表して「アリランはんしん」の康永洙理事長があいさつを行った。

 康理事長は、04年5月に兵庫県知事の認証を受けた後、同12月にデイサービスのオープンセレモニーを行ってからの5年は、在日同胞と地域共生のためにひた走ってきたチャレンジの5年だったと振り返った。

 また、ホームヘルプサービスやケアプランセンター事業なども積極的に行い、現在では210余人の同胞高齢者の介護サービスを行っていることに触れ、今年からは子育て支援事業「アリランキッズ」も開始し、26人の子どもたちが通っていると指摘。「アリランはんしん」の歩んできた道のりには常に地域同胞たちの温かい声援と日本の人たちの惜しみない支援があり、同胞や困っている人のために何かしたいと集まったスタッフたちの汗と涙の結晶がつまっていると強調した。そして、大変なことも多いが、「アリランはんしん」を訪れるハラボジやハルモニ、子どもたちの屈託のない笑顔が力をくれ、後押ししてくれていると話した。

 康理事長は、今後サービスの質をさらに高めるとともに事業所のシステム構築が必要だと述べながら、成熟した落ち着いた事業所にしたいと指摘。困っている人、同胞を助けるという原点を再確認し、これまでやってきたことを振り返り、やらなければならないことをしっかりとやっていきたいと決意を述べた。

感動、健康、工夫の「3K」

講演中は終始笑いが絶えなかった

 三好代表は、24歳の時に広島県の特別養護老人ホームに務めたのをきっかけに介護分野にかかわるようになったと述べながら、当時入所していた老人やホームの上司たちから多くを学んだと話した。

 また、認知症の人は、現在の自分を認めることができず、自分がもっとも自分らしかった頃に戻ることで、自分の存在の確認をしているのではないかと指摘。ストレスを発散しようと旅に出るのと同じように、認知症の人も過去に旅することでリフレッシュしていると考えれば、認知症はそれほどかけ離れたものではないと述べた。

 そして、認知症は「治す」のではなく「付き合う」ものだと述べながら、認知症の人の「問題行動」を落ち着かせるために「クスリ」を使うのはもってのほかであり、施設に彼らの私物を置くことで自らのアイデンティティーを確認できる場を設けるなど、あくまでも人との付き合いが解決への道だと語った。

 そのうえで、人との係わり合いを通じて認知症に取り組む各地の例を紹介しつつ、「介護は『きつい、汚い(臭い)、給料安い』の『3K』などと言われているが、私から言わせれば『感動、健康、工夫』の『3K』であり、一人でも多くの人たちに携わってもらいたい仕事」だと力強く語った。

 三好代表は最後に、「ブリコラージュ(創意工夫、ここでは介護)はサイエンスにはなりえない。しかし、アートにはなりうる」というフランスの文化人類学者・クロード・レヴィ=ストロースの言葉を紹介し、現在の日本の医療や看護、リハビリの流れについていく必要はなく、同じ人として付き合っていくことが大切だと締めくくった。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2009.12.21]