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雇用、生活安定のための新しい支援策がスタート 在日同胞も積極活用を

Q&Aで一部を紹介

 昨年秋以降の世界的な経済不況は、日本社会にも大きな影響を及ぼしている。「派遣切り」により職と住まいを同時に失った人たちや、雇用調整やリストラで失業した人が増えている。そんな中、総連では12月15日から関東と近畿に「同胞就職相談ホットライン」を開設し、便宜を図っている。NPO法人同胞法律・生活センターでも失業期間中の生活相談を積極的に受け付け、情報提供を行っている。

 しかし、雇用情勢は厳しく有効求人倍率は0.44とのこと。実際のところ、自分の年齢の3倍以上の数の履歴書を送っても面接にすらつながらないというのが現実のようで、再就職を果たすのは非常に困難な状況だ。言うまでもなく、失業はその人の生活を直撃する。失業状態が長引いたり、あるいは失業給付の受給資格がなく失業と同時に直ちに困窮状態に陥る人も少なくない。

 雇用と生活の安定のための社会保障制度の充実が叫ばれる中、失業期間中の国民年金保険料の免除や、離職により住まいを失った人への住宅手当の支給、職業訓練期間中の生活資金の給付や融資など、第2のセーフティネットと呼ばれる新しい支援策がスタートしている。いくつかの事例をとおして、Q&Aでその一部を紹介する。

−住宅手当

 Q 去年の12月、体調不良で退職しました。この間失業給付でなんとかやり繰りしてきましたが、再就職先が見つかりません。失業給付の受給も終了し、このままではアパートの家賃も支払えません。なにか手立てはないでしょうか。

 A 「住宅手当」(2012年3月末まで)があります。これは、@職を失った人(過去2年以内に離職した人で、「解雇」「自己都合」など離職の理由は問いません)で、A現在、住居喪失状態にあるか、あるいは住居を失うおそれのある人を対象に、B住宅手当として家賃を6カ月間にわたり支給することにより、住まいや就労の機会を確保しようというものです。

 住宅手当の支給要件は、@原則収入がない(収入があっても、単身世帯の場合は月額8万4千円以下、複数世帯は17万2千円以下であること)、A預貯金が一定額(単身世帯の場合50万円、複数世帯は100万円)以下である、Bハローワークに求職登録をして、定期的に職業相談や就職活動を行っていること−の3つです。

 手当の支給期間は6カ月で、支給金額は生活保護の住宅扶助基準に基づき、東京都23区の場合では単身世帯で5万3700円(居住地域、家族の数による)で、大家さんあるいは不動産屋さんに対して直接支払われます。また、自営業をしていたが廃業して就職先を探しているような人も申請の対象になります。申請窓口は最寄りの福祉事務所です。

−職業訓練と生活支援給付

 Q 自己都合で退社して2年になります。この間妻のパート収入とアルバイトでなんとか生活していますが、安定した就職探しに苦労しています。資格を取得するにもお金がないし…。

 A 訓練・生活支援給付という制度があります。これは雇用保険に加入しておらず受給資格がなかったり、あるいは失業給付の期間が終了した人が、ハローワークのあっせんを受けて職業訓練を受講する場合、訓練期間中の生活費を支援しようというものです。

 職業訓練には、再就職に向けて介護職や会計・簿記、医療事務、インターネットやパソコン技術などのコース(内容は実施する自治体によって異なり、また応募人員が足りない場合は開講されないこともあります)があり、訓練期間中(3カ月、6カ月から1年など)に単身者は月額10万円、扶養家族のある場合は月額12万円が支給されます。

 訓練・生活支援給付金を申請するには、@世帯の主たる生計維持者であること、A申請の時点で年収が200万円以下で、かつ世帯全体の年収が300万円以下であること、B世帯全体の保有する預貯金等の金融資産が800万円以下であること、C現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していないこと、などの要件を満たす必要があります。

−就職安定資金融資

 Q 今月末に期間満了による雇い止めで退職せざるをえず、それに伴い社員寮を明け渡さなければなりません。アパートを借りるにもお金がなく、また失業給付が出るまでの間の生活費もありません。何か利用できる貸付制度はないでしょうか?

 A 就職安定資金融資の制度が利用できるでしょう。これは、派遣切りや雇い止めなど事業主の都合によって失職し、その結果住むところもなくなった人、または社員寮などを退去しなければならない人を対象に、新しい住まいへの入居にかかる初期費用や当面の生活にかかる諸費用を貸し付けるというものです。貸し付けは中央労働金庫が行います。

 雇用保険の受給資格の有無は関係なく、貸し付けを希望する人(離職して1年以内であること)は、まずはハローワークで求職の申し込みと住まいの相談を行い、申請の諸条件を満たしていることにつきハローワークで確認を受けたうえで、最寄りの中央労働金庫に貸し付けを申し込みます。

 申請の条件は、@事業主都合による離職で住居喪失状態にあるか、なるおそれのある人で、A就職の意欲があり就職活動中であること、B貯金や資産がない、C離職前に主たる生計の維持者であった、以上の4つを満たす人が対象です。

 貸し付けの内容は、@新しい住まいの入居にかかる初期費用と引っ越しの費用、A家賃補助6万円×6カ月間、B常用就職活動費15万円×6カ月間と就職身元保証費10万円の3種類です。

 保証人は不要で、中央労働金庫の指定する保証機関を利用します。利息は年1.5%で、10年以内に返済しなければなりません。貸し付け6カ月後の時点で、6カ月以上の雇用が見込まれる常用職員として雇用保険の一般被保険者として雇用された場合(正社員として就職した場合)は返済の一部が免除されます。申し込みは、住所地を管轄するハローワークで、住居の明け渡し期限の1カ月前からできます。中央労働金庫の審査には2週間ほどかかるうえ、入居予定の新しい住まいの確認書類や預貯金や資産関連の証明書などが必要ですので、早めに相談に行くのがよいでしょう。

 ちなみに、審査の結果、融資が受けられない場合は既述の住宅手当と併せて各都道府県の社会福祉協議会が実施している貸付制度等を利用できる場合もあります。

 いずれの制度を利用するにもハローワークで求職の申し込みを行っていることが前提になります。これら以外にも幾つかの支援策が実施されており、それぞれに申請の窓口や準備する書類が異なります。また、離職の理由が「事業主都合」か「自己都合」か、住居をすでに喪失しているのか住まいがあるのか、雇用保険の受給資格の有無、離職してからの期間、また年金などの公的給付を受けているかどうかなど、その人の状況によって利用できる制度も異なりますので、詳細については同胞法律・生活センターまでご相談ください。

 NPO法人同胞法律・生活センター事務局(〒110−0016東京都台東区台東3−41−10、TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429)

【知って役立つ相談員のためのスキルアップ講座】

 「保険証のない超過滞在者の医療…入管政策と連動した社会保障制度の検証」

 センターに寄せられる相談の中でも一番難しいのが、オーバーステイのニューカマー同胞の医療費の問題。なかなか解決の手立てが無いのが現実。医療の現場で外国人の支援活動をしているソーシャルワーカーから話を聞く。

 日時=1月23日(土)、14時〜。

 講師=高山俊雄さん(医療ソーシャルワーカー、ひまわり診療所)

[朝鮮新報 2009.12.23]