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〈教室で〉 東京中高 高級部英語 康明淑先生

実績上げる選択班の授業、肝心なのは消化程度の見極め

 東京朝鮮中高級学校(東京都北区)では、1998年の新校舎竣工を機に、新しい時代の要求に沿って民族教育を発展させ、生徒たちの素質と可能性を伸ばすためのさまざまな取り組みが行われてきた。

 同年、高級部に情報処理科と体育科を新設。99年度から最近にかけて、文系班に国語、英語、日本語、中国語、音楽、美術、書芸の選択班が設けられた。

先月、本紙で紹介した、朝高史上初の英検準1級を取得した金成基さん(3月卒業)は英語選択班で学んだ一人だ。

10年間の成果

流暢な英語で話す康先生

 康明淑先生は、英語選択班開設当初から担当し、英語力向上に情熱を傾けてきた。

 「当初は会話と英検の二本柱を立て、週当たり2時間、外国人講師の授業を受けていた。現在では英語分科教員との相談の下、倍の4時間、会話と英検・TOEICおよびTOEIC Bridgeの勉強に取り組んでいる」

 TOEICとは、英語による基礎的なコミュニケーション能力を評価するために開発された世界共通のテストを指す。

 取材時(3月)に康先生が受け持っていた高2(現在、高3)の英語選択班(46人)では、英検2級(取得者は準1級)とTOEIC の受験を目指していた。

 授業はすべて英語で行われ、毎回、リスニング(聞き取り)・リーディング(読み方)と小テストが実施される。

 康先生によると、同クラスのTOEIC Bridgeの成績は平均130点(180点満点中)で、「日本学校と比較しても高いレベル」にあるという。

 前述の金成基さんは、留学や塾通いはせず、学校での授業と自習だけで準1級を取得した。同クラスのほとんどの生徒たちも塾には通わず、英語選択班だけで学習を積んでいる。

「わかりやすく熱心」

「卒業後は英語を使って働きたい」という生徒も

 李淑奈さんは「将来、朝鮮語・日本語・英語を使って、広い世界で、広い視野と価値観を持って働きたい」と考えている。

 「高1のときは、康先生の授業についていくのに必死だった。でも、授業に集中したおかげで試験勉強は楽だったし、新しい知識もたくさん得られた」

 崔秀栄さんも、卒業後は英語を使って働きたいと考えている。

 「康先生の授業は厳しく、宿題や予習・復習をちゃんとしていないとついていけない。勉強に対する姿勢が変わった」

 金宥羅さんは昨年夏、日本各地の朝高生30人余りとカナダへ語学研修に行った。将来、通訳になりたいとの夢を抱いている。

 「英語選択班には、先輩たちの『勉強になる』という評判を聞いて入った。高1から康先生の授業を受けてきた。多くの友人は厳しいというけれど、先生は自分が持っている知識を私たちにすべて与えようと工夫している。授業はわかりやすく、とても熱心だ」

自身の資質向上

英語選択班で使っている教材

 多くの生徒たちから「厳しい」との評を受けている康先生。その背景には、留まることを知らない自身の向上心がある。

 朝鮮大学校外国語学部を卒業後、教員生活をしながら新潟大学大学院博士課程に進み、現在、博士後期課程現代社会文化研究科で国際社会文化論を専攻している。

 愼吉雄校長は、「康先生は、教員が日々怠ってはならない資質の向上という課題を身をもって示している。この10年間、まじめに勉強に取り組む生徒が着実に多くなっている」と語る。

 康先生が、英語に興味を持ち始めたのは中高級部時代だ。

 「熱心に教える先生たちの姿に自然に引かれた。朝大外国語学部に進んでからは、梁南仁先生の影響が大きかった。『学問は追求しなくてはいけない』『シェークスピアを知らずして英文学を語るなかれ』などの教えは、今も胸に刻まれている」

 朝大同級生の多くは、卒業後も外国や日本の国・私立大学院で学んだという。康先生も教員をしながらチャレンジした。

選択授業は週4時間行われている

 大学院に入る前までは朝鮮学校しか知らなかった。日本の教育システムに触れ、新たな学問の喜びも知った。言語学と文学の研究法の授業を通して、「これは朝高の授業で使えるのでは」とヒントを得て、実際に生かしたこともある。

 「私が学んだことを、生徒たちに分けてあげられたらうれしい」

 大学院の指導教官から「朝大卒業生は違う」と褒められた時に、「やっと認められた」との喜びが込み上げてきた。大学院博士課程では現代米文学を主に勉強していて、中でもトニ・モリソン(黒人女性初のノーベル文学賞受賞者)の研究に取り組んでいる。

 「マイノリティや2重差別、女性問題、性差別など、私たちとの共通点も多い」

 現在、英語選択班を受け持つ若手教員2人は、同クラスの卒業生でもある。

 「若い教員たちと手を携えて、膨大な作業を共に進めている。教材選びや授業の研究。レベルは低すぎても駄目、高いものを計画的に推し進める。その際肝心な事は、小テストを通して生徒の消化程度を見極めること。子どもたちを大事に育てていきたいから」

 「厳しい先生」と見られがちだが、実は「マイペース」なのだと笑顔を見せる。座右の銘は「自己研鑽」。

 東京中高は今年、「勉強熱心な模範学校」を目指している。(文−金潤順記者、写真−盧琴順記者)

※1968年生まれ。東京第5初中、東京中高、朝大外国語学部英語学科卒業。立正大学大学院修士課程文学研究科英米文学専攻(文学修士取得)、新潟大学大学院博士後期課程現代社会文化研究科国際社会文化論専攻、中央教研委員、東京中高英語分科長。

[朝鮮新報 2009.4.17]