第9回「朝鮮大学校同窓会奨励賞」 受賞者の声 「同胞社会に喜びと力」 |
第9回「朝鮮大学校同窓会奨励賞」受賞式が13日、東京都小平市の朝鮮大学校記念館で行われた。 同奨励賞は、2001年に設けられ、同胞社会と日本や国際社会で著しい業績を積み、同大卒業生と同胞たちに大きな喜びと感動を与えた18人に授与されてきた。 9回目の今年は、民族教育の発展と若い世代に力と勇気を与え、困難な情勢下で在日同胞の民族圏を守り、拡大するために寄与した3人に贈られた。 同大卒初の弁護士となった金敏寛さん(政治経済学部45期、小倉南法律事務所)の歩みと声を紹介する。 朝大卒初の弁護士 金敏寛さん(政治経済学部45期) 政治経済学部法律学科の一期生である金さんは、現在、小倉南法律事務所(福岡県北九州市)の弁護士として従事している。
1980年福岡県で生まれ、北九州朝鮮初級学校、九州朝鮮中高級学校を経て、03年に朝大を卒業した。その後、同大の研究院に進学、成蹊大学大学院法務研究学科で学んだ。 そして、07年に同大の卒業生として、初めて司法試験に合格する快挙を成した。以後1年間の司法修習を終えて08年12月に弁護士登録した。 この喜ばしい結果は、同大の歴史と在日同胞社会のみならず、日本の各地方新聞にも取り上げられた。 「正直、個人的には受験から抜け出せた安堵感でいっぱいだった。しかし、周りの人たちの反応や新聞記事から、朝大が日本の大学と同等の水準であることが広く社会的に公認されたと知ってうれしかった」と当時の心境を語る。 高級部3年生の時、自身の国籍問題にぶつかったことが、法律に興味を持つきっかけに。偶然、翌年朝大に法律学科が新設され、同大に進んだ。 そして、同胞たちの権利と生活を守っていくため、法律を学び、弁護士の道を志そうと決めた。 当時、朝大は司法試験の一次試験は免除対象外だったので、中央大学の通信講座を取った。そのうえ、法律学科の先輩がいないという二重のハードルがあったが、同級生たちと苦楽を共に分かち合い、切磋琢磨し合いながら勉学に励んだ。 研究院に進み、受験勉強に明け暮れたが、翌年の04年にはロースクール制度が始まった。即座にシフトチェンジし、成蹊大学大学院法務研究科に入学。07年に新司法試験に合格した。 いつも肝に銘じているのは、「在日である自分が、どうして弁護士になるのか」という初志。 東京で就職することも考えたが、司法試験を受けた翌日に、いつも応援してくれたアボジが他界した。また、北九州市に同胞弁護士はまだいなかったという事情。アボジを亡くしたオモニへの思い、そして母校や生まれ育った地域を守り発展させたいとの思いが、地元での活動を決心させた。 弁護士となり半年が経つ。今は、07年から福岡で裁判中の在日同胞高齢者の無年金問題や、北九州市で生活保護を不当に打ち切られ、自殺に追いやられた被害者の弁護にも当たっている。 「自分−同胞社会−日本社会はつながっている。同胞社会が良くあるためには、日本社会で起こっている問題を解決し、より良い社会を築いていく必要がある」という思いから、同胞はもちろん、日本社会の中の弱者にも手を差し伸べる。 朝大の法律学科設立から今年4月で10年を迎えた。この間、同学科では弁護士(3人)にとどまらず、司法書士(1人)や行政書士(4人)、公認会計士(1人)の有資格者を輩出している。 「自身がどう生きていくのかという確固たる目標を掲げ、その手段となる資格取得に向けがんばってほしい。また、より多様な分野に進出していってくれればうれしい」と後輩たちにエールを送った。 そして、ウリハッキョ出身の弁護士として、より良い同胞たちの暮らしのため尽力していくと語った。(姜裕香記者) [朝鮮新報 2009.6.19] |