〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 L〉 法鼓、雲板、木魚、梵鐘 |
地、空、水の生き物を救う 仏教儀式に使われた楽器
今回は仏教音楽においてのウリナラの楽器に触れてみよう。 まずは朝鮮の音楽の根元とも言えるポムペ(梵唄)の話からはじめよう。「唄」という字は「唱」と同じ意味の梵語から作られた。他に梵音、梵声とも呼ばれ、これを歌うお坊さんを「魚丈」という。別名、魚山またはインドの音とも言うが ポムペはリズムと和声がない単旋律で、寺で法事の時使われる仏教儀式の音楽だ。 ポムペの歴史は、新羅の高僧・真鑑禅師から始まったと推定される。真鑑禅師は西暦804年唐に留学した後830年に帰国、その後玉泉寺で弟子らにポムペを教えたという(三国遺事では景徳王760年頃にはポムペ僧がいたことを暗示している)。 古代インドでは聖典ベーダーに曲を付けて詠ったことからバラモン教の音楽が発展したと言われている。また中国では三国時代に入ってきた康僧會がポムペの名手と言われた。「法苑珠林」36によれば、魏の曹植が山東省魚山で梵音を蕪セしポムペを創作したと伝えられ、これが「聲明」というポムペの起源だとされる。 では、仏教儀式音楽に使われる仏具(楽器)を紹介してみよう。 佛殿四物といわれる、ポプコ・ウンパン・モゴ・ポムジョンの順で挙げてみる。 ポプコは弘鼓ともいい、ただのプクとも言う。よく乾燥した木で胴を作り両面は牛革で覆う。これを使って踊るのが仏教儀式舞踊の一つ「ポプコの舞」だ。太鼓踊りの一種で作法の一つとされている。 また無律打楽器の一つバラ(真鍮で作られた金属楽器)を使った仏教儀式舞踊に「バラの舞」がある。踊る時、両手にバラを持って舞う。仏法を守護する意味を持つ踊りで、儀式道場を浄化して神聖な場所に清め、呪術的な意味も持つ。 次にウンパンとモゴを紹介する。 ウンパンは大板とも言う。雲形の薄い青銅または鉄製平板で、叩くと綺麗でうるおった音がする仏教工芸品だ。板の上に菩薩像や真言を刻んだり、端に昇天する龍や雲、月を刻んだ。上側に穴が二つあけられていて、ぶら下げられる。 モゴは木魚鼓、魚鼓、魚板とも言う。この法具は木を魚の形に作ってぶら下げ、佛事の時に叩く。 最後にポムジョンを紹介しよう。寺で人々を集めたり、朝、夕の時間を伝えるために使う鐘で、鯨鐘、釣鐘、撞鐘とも言う。インドのラ稚と中国の銅鐘を土台に作られ朝鮮を経て日本に伝えられた。 佛殿四物はそれぞれ、地の上を歩く革をまとった物、空、水の中で生きる物を救い、悪から人々を助けるとの意味を持つ。 皆さんがよく観るサムルノリは、農楽器のケンガリ、チン、チャンゴ、プクで演奏する音楽。四物というのは本来、前述した仏教儀式に使われた法鼓、雲板、木魚、梵鐘を示す言葉であった。それが、ポムペで使われる太平簫、チン、プク、木鐸に変わり、ケンガリ、チン、チャンゴ、プクとなって今に至る。これらは星・人・月・太陽を象徴し、その音は稲妻、雨、雲、風の音に比喩したりするが、これを「雲雨風雷」という。 また金属楽器は空、革楽器は土地に比喩したりもする。(康明姫・民族音楽資料室) [朝鮮新報 2009.6.26] |