そこが知りたいQ&A−「全面対決態勢に突入」 朝鮮人民軍 総参謀部声明はなぜ? |
反北政策維持の李政権に見切り 既報のように、朝鮮人民軍総参謀部は17日、スポークスマン声明を発表し、李明博政権の反北対決政策に対処して「全面対決態勢に突入する」と宣言した。声明の内容と発表の背景、今後の展望などをQ&Aで見た。 Q 声明はどのような内容か。 A 柱は3点の「原則的立場」からなる。@反北対決政策を粉砕するための全面対決態勢に入る、A南朝鮮軍の「先制攻撃」「よう懲」には「強力な軍事的対応措置」で対応する、B北側が設定した西海海上軍事境界線を固守する、というものだ。 Q なぜこのような厳しい内容の声明が今になって発表されたのか。 A 李明博大統領は昨年12月31日、統一部の業務報告を受けた場で「過去のように、経済協力によって南北関係が改善されると考えてはならない」と語り、「協力無用論」を力説した。 6.15共同宣言、10.4宣言を踏みにじり無効にしようという考えに変わりがないことを明らかにしたものだ。 また李相熹国防長官は2日、新年の辞で「政府の政策を力で支える」と述べ、1日には海軍第2艦隊を訪れ「西海交戦準備」を促す発言をした。 南側が反北対決姿勢を鮮明にするなか、国の自主権と安全、平和を担う軍としての対応を示す必要があったのだ。 Q 朝鮮人民軍総参謀部の発表は異例だというが。 A 軍部の立場は通常、板門店代表部や北南軍事会談のスポークスマンなどが発表する。90年代から、朝鮮人民軍総参謀部が直接、立場表明したのは、今回を含め3度しかない。98年12月、核危機で緊張が高まった米国の先制攻撃をけん制するスポークスマン声明を、99年9月には米、南の軍が主張する「北方限界線(NLL)」を無効と宣言する特別報道を発表した。 一般的に総参謀部とは、軍隊を統率・指揮する最高機関を指す。朝鮮人民軍総参謀部がどのような立場にあるのかは、総参謀長が国内行事で常にひな壇の中心部に位置していることからもわかる。 このような機関が厳かに声明を発表したことは、声明に示された立場が一時的なものではなく、北側の確固たる立場だということを示している。 国内では声明発表直後から、これを支持する人士らの反響や論評を連日特集するなど、声明支持キャンペーンが繰り広げられている。 Q 声明発表の背景は? A 北側は、6.15共同宣言、10.4宣言に対する南側の態度に変化がない場合には「重大措置」をとる可能性を示唆していた。昨年11月、北南将官級軍事会談北側団長が「委任」により軍事境界線通行遮断などの「重大措置」を12月1日から断行すると発表した際、これを「一次的」とした。 今回の声明発表の背景には、「もう傍観できない段階に至っている」南軍部の挑発行為など複合的な要素がからみあっているが、李大統領の「協力無用論」が決定的に作用していると思われる。 北の軍部には、朝鮮半島情勢の緩和、民族和解のため南に譲歩するものはすべて譲歩してきたという認識がある。停戦状態にあり、米国の脅威が続いている中で、軍事的緊張地帯の開城と金剛山地区を南側に開放した。 対話も、協力さえも否定し、同族対決姿勢を見せる相手に「これ以上の善意は見せられない」(労働新聞19日付)ということだろう。 声明は「李明博政権は民族の和解と協力を否定し、対決の道を選択した」と断定。交渉の余地を一切残していない。北側は現南政権との交渉に完全に見切りをつけたとも受け取れる。実際に声明発表後、朝鮮国内の新聞は再三、李明博大統領が権力の座から退くよう要求している。 Q 声明に対する南の反応は? A 南軍部は「過去の主張と変わりない」(国防部関係者)と平静を装っているが、「国民の間に不安感が広がらないよう」(17日発連合ニュース)にするための対応だ。 野党側は、「南北関係を硬直させた政府の対北政策の全面的転換と関係改善の意志表明が必要」(民主党スポークスマン)だと、李政権に促している。 一方で、声明発表直後に南の合同参謀本部は、全軍に「対北警戒態勢強化」の指示を下した。NLL付近の軍事力を増強していると伝えられている。 Q 今後の展望は? A 声明は、今回の措置について「正当な自衛的措置」だと指摘し、「軍事的対応措置」と「北側が設定した海上軍事境界線固守」をせん明した。 南側が北との対決姿勢を改め、6.15、10.4宣言を履行する立場に戻らないかぎり、緊張状態は続いていくだろう。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2009.1.27] |